COLUMN ビジネスシンカー

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2018.08

ビッグデータ時代に押さえておきたい 統計データの見方のキホン

【newcomer&考察】深く適切な眠りに「Sleep Tech(スリープテック)」働き方改革で加速!?

 サッカーのワールドカップが終わり、ようやく寝不足から体調も戻ったかなと思ったら、間もなくアジア競技大会が始まる。またも熱戦が続けば、寝不足も続くことに。大丈夫か、自分......と不安がのしかかる人も多いだろう。

 心配無用だ。いまはテクノロジー万能時代、フィンテックにアグリテック、アドテック、ファッションテックにエドテック、リーガテック、トランステック、リアルエステートテック...えっ?なんのこと?って......。

 すべてわからなくてもいい。要はいまどきのたいがいの問題はテクノロジーが解決してくれるということだ。

 そう寝不足や不眠の悩みもテクノロジーが解決してくれる。それがスリープテックなる技術だ。日本人の睡眠時間は世界的にも短いことで知られてきた。平均で7.9時間。OECD各国では下から2番めの短さだ。実際はこれほど睡眠が取れているビジネスパーソンは少ないと思われる。

 短くてもいいから質の高い眠りがほしいと思うのは、人類共通の願望だろう。

 眠りが社会問題化したのは、2003年山陽新幹線の運転手が居眠り運転をして駅をオーバーランしたことに始まる。このとき記者会見したJR西日本は、前日に当該運転手が十分な睡眠時間をとっていたにもかかわらず、居眠りをしてしまったことを呆れたように発表していたが、後に本人が睡眠時無呼吸症候群=SASであったことが判明すると、態度を一変、不明を恥じた。会社全体としSAS対策を進め、乗客の安全と安心を確保することを表明することとなった。SASは一気に社会問題化した。質の悪い眠りは、本人だけでなく、周囲や社会にも大きな影響を及ぼすということが認識されていったのである。

 2006年に日本大学の内山真教授は、睡眠不足や睡眠障害によって引き起こされる日本の経済損失を、約3兆4600億円と試算している。睡眠不足や睡眠障害は根性や気合で克服できるものではなくなっている。正しい理解と適切な対応、場合によって治療が必要となるのだ。それに呼応するように医療機関でも睡眠外来など専門外来が増え、またドリエルなど市販の睡眠導入剤も販売されるようになった。一方ビジネスホテルでも枕を選べたり、眠りやすい寝具を揃えて宿泊客にアピールするなど、睡眠は宿泊業における差別化の源泉にもなっていった。

 寝具業界の業界紙「寝具新聞」によれば、睡眠ビジネスの市場は、約1兆1200億円(2016年)で、潜在的には3兆円とも5兆円とも言われている。
睡眠ビジネス市場に風が吹いているのは、従来の延長から関心の高まりだけでなく、国が進める働き方改革があるからだ。国は電通や国立競技場建設現場などでおきた相次ぐ過労死問題を受け、働き方改革の一環として「勤務間インターバル制度」の導入を勧めている。

 勤務間インターバル制度とは、勤務終了後、次の勤務まで一定の休憩時間をとらせる制度だ。国としては、適切なインターバル休憩を確保することで、事故を防ぎ、国民に健康を維持してもらい、ひいては医療費削減を図る狙いがある。

 厚労省は勤務間インターバル制度を導入するために、設備や機器の導入、コンサルタントのアドバイスを受ける企業に一定金額を助成する助成金制度も行っている。具体的にどんな設備・機器が助成対象になるかは、詳らかではないが、同省のサイトには、テレワーク用の通信機器の導入や労務管理用の機器、パソコンやスマートフォンなどを除く労働効率の増進のための設備・機器となっている。

 果たして、その設備・機器にスリープテック機器が入っているといいのだが......。

Nokia Sleep(Nokiaサイトより)

スリープテックでもっとも代表的なものは、人間の睡眠リズムに合わせて、目覚ましをかけるアプリやスマートウォッチだ。スマートフォンメーカーのノキアは、布団の下に敷いて、睡眠サイクルやいびき心拍数などをトラッキングし、理想の眠りのタイミングやサイクルを知らせてくれる「Nokia Sleep」を販売している。単に睡眠をトラッキングするだけでなく、眠りに入るタイミングで室内の明かりを落としていったり、朝目覚めのタイミングで明かりを点けたり、エアコンの暖房を入れたり、コーヒーを淹れてくれることも可能だ。

 また蓄積したデータをベースに、本人にあった睡眠サイクルの改善プログラムも利用できる。

 フランスのスタートアップ企業のRhythm社は、つけるだけですぐに入眠できるヘアバンド「Dream」を開発した。脈拍、呼吸、体の向きなど、睡眠に関わる生体情報をキャッチして分析、骨伝導を通じて入眠しやすい音を流す。

Rhythm社(公式サイトより)

 一方、いつでもどこでも眠れるという夢のようなゴーグルが「Sana」。かけていると音や光によって脳に特定の働きを引き起こし、自然な眠りにつくという。慣れるまでは4回ほど練習する必要があるというが、慣れれば10分ほどで眠りに落ちるようになるという。

Sona Mask(公式サイトより)

 「Somnox」は、オランダのベンチャーが開発した、新しい枕。ふわふわとした素材の一見すると抱き枕。抱えるとスイッチが入り、人間と同じように呼吸をする。すると次第にこの枕と呼吸を同調させるようになり、いつの間にか眠っているというもの。

Somnox-Kickstarter(クラウドファンディングサイト)より

眠りを制する者が、ビジネスを制する時代になってきたようだ。

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