COLUMN ビジネスシンカー

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2018.10

[明治維新150年にあたって考える]
大変革時代、明治の先人たちはどう生きたか
混乱の世で事業を成功させた企業家たち

明治期の成功した起業家に共通していたことは?

 今年は明治維新150年の節目の年だ。

 明治維新は日本史のなかでは鎌倉以降の武家政権の終焉を意味し、士農工商という身分制度が撤廃されたコペルニクス的な大変革である。

 幕藩体制、鎖国が終わり、さまざまな尊皇派、攘夷派、公武合体派などが入り乱れ、内乱や戦争が勃発し、混沌を極める時代である。人々は西洋との科学、国富の差をまざまざと見せつけられた。その混乱の時代にあっても高い志をもった若者が欧米の知識文化を吸収し、新しい日本をつくろうとしていた。

 現在のようなインフラや社会制度がまだ確立されてない時代。彼らのなかには現代では想像もつかない苦労を重ね、私たちが夢にも思わない豪胆なアイデアと行動力で道を切り開き、いまにつながる企業の礎を築いた人もたくさんいた。

 大阪大学名誉教授の宮本又郎さんによれば、幕末から明治期を通じて企業を興隆させた人物のタイプには5つあったという。

 1つは江戸期の豪商が幕末から明治維新の混乱を経て没落していくなかで、経営改革や制度改革を通じて、近代企業へと脱皮したケース。いわば「旧商家の再勃興タイプ」。

 2つめが幕末、明治期にかけての混乱期にビジネスチャンスを見出して一気に成長した、「明治ベンチャータイプ」。

 3つめが欧米などの技術を積極的に取り入れ、あるいはこれまでの技能や技術を生かし成長した「技術・技能タイプ」。

 4つめが、社会が求めている困りごとの解決を事業として挑んだ「社会的企業タイプ」。

 5つめが、資産家と企業家を結びつけて、ときに政府に関わりながら事業を生み出していった財界指導者と呼ばれる人たちが興した企業群。すなわち「財界指導タイプ」。

 これら5つのタイプの人たちが、さまざまな人と巡り合い、時に裏切りに遭いながら、自分の能力と未来を信じて、運命に翻弄されながらも明治という新時代を切り拓いていったのだ。

 この5タイプ分けはいわば後づけの結果論だ。ただ5タイプに共通していることは、武士や商人、農民といった従来の階級、身分に囚われない人であったことだ。いわば境界線からはみ出たマージナルな人、"マージナルパーソン"と言えるような人たちである。

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