COLUMN ビジネスシンカー

  • SHARE
  • LINE
2018.12

働き方改革の先人たち 「実践・逆張り・非常識」経営 あの会社はなぜ業績を上げたのか

食べて満足できなかったら返金保証で、
満足度を上げたリゾートホテル

 リゾート施設の再生人と言われる「星野リゾート」の社長、星野佳路さんも業界の逆を突く手法で業容を広げてきた人だ。軽井沢の星野温泉旅館の4代目として生まれた星野さんは、有名ホテルチェーンや留学などの経験をもとに当初は軽井沢だけで営んでいた旅館業を、現在ホテルや旅館、日帰り施設など内外で50の施設を展開するまでに伸ばした。

 星野さんのマネジメント手法の根幹は、権限移譲、現場のスタッフに任せるというものだが、すべて同じというわけではない。年齢構成、旅館やホテルのウリの具合によってバランスをとっている。王道のやり方をしているところもあるが、業界としてあり得ないことも多々実践している。

 そのひとつが、スキーリゾートのレストランの「美味しくなかったら代金を返金する」制度。

 福島県にある「アルツ磐梯」スキーリゾートは、地元の第三セクターが運営していた。バブル経済の崩壊などから苦戦を強いられていたが、星野リゾートが2002年に運営を受託、改革に乗り出した。

 その柱としたのが、スキー場のレストランのメニュー。星野さんは受託が決まると足繁く現地を訪れ、アルツ磐梯の良し悪しを分析していった。その際、アルツだけでなく、全国のスキー場の傾向についてもアンケートを取った。そこでわかったことは、スキー場を訪れるほとんどのお客は、昼食にほとんど満足していないことだった。

 そこで星野さんはメニューのなかでも5割を占めるカレーライスを重点的に改良していった。そして、その自信を表すために「おいしさ保証」をつけたのだ。具体的にはお客様がまずいと思ったら、代金をすべて返金するというものだ。

 スタッフたちは、「そんなことをしたら、『おいしくない』と言われて、不当な返金が相次ぐため大変なことになる」と激しく反発したという。

 しかしスタートしてみると、返金はほとんどなかった。

 最初に返金を要望してきたのは制度を始めて3日めのことで、若いお客様だった。理由を聞くと「ごはんがべとべとだった」という。スタッフが確認すると、炊飯器の老朽化でごはんがしっかり焚けていなかったのだ。この時スタッフは大慌てで新しい業務用炊飯器を注文した。

 この日を境にスタッフは「どうしたらお客様に満足いただけるか」を意識し、「おいしさ保証を伝える看板をつくろう」「辛口がどれくらい辛いかをきちんと伝えよう」など、積極的に工夫をすることを始めたという。

 おいしさ保証は結果的にお客様の満足度を上げ、またスタッフの顧客満足度意識も高まり、アルツ磐梯を代表する名物カレーになったのだ。

 実際おいしさ保証の返金は年間10万食のうち約10件ほど。星野さんは「お客様は誠実だということがわかった」という。

 星野リゾートの手がけた返金保証は、さまざまな小売り販売で広がっている。とくにネット販売では一般的になっている。傍で聞くと「そんなことをしたら返金だらけになる」と思ってしまうが、こうして多くの企業が採用しているところをみると、お客は実際には満足度の高い商品を購入しているということが言える。また返金保証で実際に返金が発生するのは、よほどの問題点があった時に限られているから、むしろそこを改善することでさらに満足度の高い商品、サービスにつなげていくことができ、プラスに働いていくのだ。

  • LINE