COLUMN ビジネスシンカー

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2019.12

ビジネスの原点は優れたコンセプトづくりにあり! コンセプトづくりのツボを知る

コンセプトは概念ではない。アイデアでもない。本質であり、特徴であり、仕組みである

コンセプトとは何だろう。コンセプトは日本語では「概念」と訳されるが、しかしことビジネスや社会においてはちょっと違うようだ。もっと身近で、具体的で本質的な存在なのだ。上述した著名人やコンセプトに関する本が強調してるのは「本質的」であることだ。

とくに野口さんは「コンセプトは概念ではない。コンセプトは本質であり、特徴である」と言い切っている。平林さんもコンセプトはテーマがあった時、「本質は何か」を問い、納得できる結論を出す「求心軸」であるとしている。「本質」とともに大事なのはもう1つ、コンセプトはアイデアや発想とイコールではなく、アイデアを整理し検証し、仕組化されたものであることだ。アイデアや発想はともすれば、コンセプトと同列に考えられがちだが、アイデアだけを集めてもコンセプトにはならない。平林さんは、アイデアとコンセプトを次のように関係づけている。

つまり頭に浮かんだ発想を、どのように展開していくかを方向づけしていくことがコンセプトなのだ。

ビジネスにおいては、いかに優れたアイデアや思いつきがあっても、具体的なものや仕組みとなり、さらにそれが結果をもたらさないと意味をもたない。コンセプトはそのふと湧いたアイデアや思いつきを整理し、まとめたもの。いわば個人の考えを共有化する技術、メソッドであると言える。

逆にいえば、協力者や市場、時代から「ナルホド」という共感を得られないものは、コンセプトたりえない。周囲から共感・理解を得るためには当然第三者からの検討が必要となる。優れたアイデアが優れたコンセプトになるためには、第三者のフィルターを通す必要があるのだ。

難しく考えることはない。「そのアイデアって何? どういうこと?どうすればいいの?」という問いに対して「こういうこと。だから、こうすればこうなる」と提示できればいいのだ。

さらにもう1つ、コンセプトの重要な条件としては、「驚き・違い」が入っていることだ。驚きや気付きはアイデアや発想の原点でもあるが、要はそれが一人だけのものか、複数のものなのかということ。驚きや気付きは個人の感覚や感性によるが、驚き・気付き発見力は鍛えることができる。

『BCG流非連続思考法』の著者でボストンコンサルティングのコンサルタント森澤篤さんは、驚きを4つのタイプに分けている。

1つは「何かの存在に驚く」ことで、何か製品に不具合が生まれた、設備から変な音がする、匂いがする、顧客の反応が違うといった、変化の存在を気づくこと。2つめは、「何かが以前から存在していたにも拘わらず気づかなかったことに驚く」こと。たとえば病気やけがをしてみて、健康というありがたさに気付く、思いのほか車いすの人や杖をついている人がいることに気付いたり、当たり前だと思っていたことに気付いたりすること。

3つめは、「もはや存在していないことに驚く」こと。つい2、3年前に買った家電品に不具合が生じたので、店やメーカーに修理を頼んだら、すでに廃盤になっていた、などということはよくあること。教科書などでも昔習ったトピックが現在は入っていなかったりすることも、若い世代と話して初めて知ったりする。

4つめは「何かがまだ存在していないことに驚く」こと。50年前に計画された公共工事がいまだ完成してなかったり、トヨタグループの創始者の豊田佐吉が1925年に100万円の懸賞金をかけた36時間連続で100馬力、容積約280リットルという電池は、21世紀迎えた今でも完成していなかったりすることだ。

これら4つの驚きのパターンをもとに、起こっている現象を見ていくといろいろな発見や発想が生まれるはずだ。「本質性」、「アイデアや発想を整理して仕組化する」、「驚きと違い」 ― 、こうした3つの要素を盛り込むことでコンセプトはつくり上げられる。

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