COLUMN ビジネスシンカー

  • SHARE
  • LINE
2020.05

新型コロナのいまと
コロナ後を考える

新型コロナは
年をまたいでまた襲ってくる

2020年5月4日現在、新型コロナウイルスの猛威は世界中でとどまるところを知らない。政府は連休明け5月7日に緊急事態宣言を解く予定だったが、5月末までの延期が確定した。ちなみにメディアで表記されるCOVID-19 とは感染症名であり、ウイルスは(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2) が正式名で、SARS CoV-2 と略されている(以下表記CoV-2))。

世界的なパンデミックは、過去の例を見ても短期で終わることはなく、およそ100年前のスペイン風邪(インフルエンザ)では足掛け3年続いた。1918年1月から20年末までに世界中で約5億人が感染し、死者は4000万人から1億人とも言われている。

当時の世界人口が約18億人であったことを考えると、現在の人口77億人換算では約1億7000万人から4億2000 万人が亡くなったことになる。

現在の医療環境と当時との違いを考慮すれば、そこまでの死者数にならないだろうが、仮に今回のパンデミックの犠牲者が2桁低かったとしても恐ろしい数字であることは間違いない。

スペイン風邪の場合、大きな波は3回訪れている。日本においてはもっとも感染者が多かったのが1度目の1918年の10月から3月で、約2100万人が感染し、26万人が死亡した。2度目が1919年10月から3月で約241万人が感染し、約13万人が亡くなった。3度目が1920年の10月から3月で、約22万人が感染して約3700人が亡くなった(内務省調べ)。

この数字からわかるように感染者数は1度目が圧倒的に多い。母数が多いため1度目の死者数も多いが、2度目の波では感染者数が1桁低いにも拘らず、死者数は1波の半数までしか落ちていない。

1波の致死率は1.22%であるのに対し、2波は5.29 %と4倍以上に跳ね上がっているのだ。これほど死亡率が上がったのは、いろいろ考えられている。1つには1波で免疫を獲得できなかった人々が重症化したと考えられることだ。またウイルス自体が進化し、毒性が上がった、つまりウイルスが進化したことが理由とも考えられている。インフルエンザウイルスは、RNAを遺伝子としたウイルスでDNA遺伝子を主体とする生物と違う。ウイルスは自分を寄主の細胞でコピーして生き延びるが、RNAは鎖が1本で、2本ある鎖のDNAに比べて不安定であるため、エラーが起こりやすい。しかもDNAの場合ミスコピーが起きた時に自己修復機能が働くため、エラーを起こしにくい。対してRNAはこの修復機能を持たない。よってミスコピーが起こると変異したままとなる。

ヒトには感染防御免疫があるが、ウイルスがどんどん変異するとこの免疫が追いつかなくなる。しかもウイルスの変異の大きさは一定ではなく、「シフト」と呼ばれる小さな変異と「ドリフト」と呼ばれる大きな変異を繰り返し延命を図るのだ。一般にドリフトの変異は40 〜50年周期とされ、これが新型インフルエンザウイルスとなる。

また人が持つ免疫が高いからと言って、死亡率が低いとは限らない。スペイン風邪では10代から30代の若い世代が多数死亡している。これは免疫が強すぎるあまり、スペイン風邪ウイルスと他のウイルスが体内で激戦となり、体が消耗したためとされている。

今回のCoV-2 の場合はどうか。いまのところPCR検査の数が限定的であるため、正確な数字は不明だが、感染率、致死率は一般的な風邪と同程度と推定されている(再生産率=Rは約2.5)。変異のパターンはA、B、Cの3種類ほど(4月9日現在)だが、さらに変異する可能性がある。変異の種類が増えるにつれ今後さらに感染者数が上がり、死亡率も変化するだろう。一旦感染し、抗体を獲得しても変異が大きい場合は、再感染する可能性もある。

ただいま話題の「アビガン」の開発者である富山大学医学部名誉教授の白木公康氏の緊急寄稿によれば、「コロナウイルスはRNAウイルスのなかでは校正機能を有する酵素を持つので、変異が起きても、それを除去して正しく複製する」と語っている。

よって、インフルエンザのような多様な変異は起こりにくいと考えられ、「2回かかるとは思われないが、 病原性や広がりの研究には重要と思われる」としている。

ただいずれにしても2波、3波に備える必要はあり、変異したウイルスが複数出る可能性はまだまだある(複数の専門家が指摘)。延長された非常事態が終わったからと言って、新型コロナ以前のライフスタイルに丸々戻ることはないだろう。

  • LINE