COLUMN ビジネスシンカー

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2020.06

ポストコロナ時代の羅針盤
知って目からウロコ!
開疎化の時代の産業集積入門

隠れた日用雑貨のまち、
和歌山県海南市

和歌山県海南市と言われて特産物をイメージするのは難しいかもしれない。実は海南市は日用雑貨製造の集積地なのだ。日用雑貨というと幅広いが、キッチン用品やバス・トイレ用品などまさに日用雑貨品の製造業者が集まっている。とくにたわしを含むクリーナー類では、シェア9割を占めていると言われている。

日用雑貨産業の直接的起因は近世の棕櫚(シュロ)産業にある。シュロはヤシ類の植物で、耐寒性に優れ、東北地方以南の各地で栽培が可能だが、本来温かい気候を好むため紀伊半島の温暖な気候は生育条件として最適だった。その繊維の耐久性、強靭さは古くから業網などに使われ、大坂や江戸に売られていたという。

明治時代になるとシュロの需要は水産関係以外にも田引縄など農業用や建築用、造園用に拡大していく。その一方で、産業用以外にも用途を広げた。消費材として、マットやブラシ、たわしなどの新製品が生まれ、その素材として使われていったのだ。

こうして用途が拡大していくと、やがて縄や箒などの完成品の生産を行う人も出て来る。するとこれを消費地に販売する問屋が発達する。一帯で誕生した製品を「旅」と称して全国を訪ね歩き、販路を拡大していくことも行われるようになった。

また地場問屋のなかには、需要を満たすために普及し始めた製縄機を農家に貸す者も出てくる。そこから次第に問屋制工業が広まり、一帯の生産性が上がっていったのだ。

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