COLUMN ビジネスシンカー

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2020.06

ポストコロナ時代の羅針盤
知って目からウロコ!
開疎化の時代の産業集積入門

和雑貨の原料
「シュロ」不足が、
日用雑貨のまちへ
進化を促す

ところがこうやってシュロを使った日用雑貨商品が増えていくと、次第に原材料のシュロの供給が追いつかなくなっていった。しかし結果的にそのことがそれぞれの原料の個性を活かした新たな商品開発に結びつき、「和雑貨産業のまち・海南」が確立していくことになる。

戦争を挟んで、高度経済成長期の到来は、海南の和雑貨産業の大きな転換期となった。

その第1の要因は国民生活の洋風化だ。生活の洋風化に伴い新しい商品アイテムが創出されていったからだ。また核家族化が進展し、これに応じた新規の住宅と生活物資の需要が喚起され、日用雑貨市場が広がっていった。

もう1つの要因は、石油化学工業の発展に伴う化学素材の開発である。

プラスチックやナイロンなどの新素材が次々と誕生していくと、生活雑貨は世の中に急速に普及していった。これらは従来の天然素材と比較しても加工が容易なため、量産化しやすく、価格も抑えることができ、その結果さらに商品が多様化していく。

年を追うごとに多様化していく商品は、やがて雑貨という範疇で捉えきれなくなった。1986年には業者の組合も海南特産"和雑貨"協同組合から、海南特産"家庭用品"協同組合に名称変更されている。

現在海南一帯では、主に3つのタイプの事業者が家庭用品の開発製造を続けている。

1つは量販店向けの製品を提供する事業者。低価格志向の量販店では、より低コストの海外で生産を行うところも多いが、すべてを海外に頼ると品質や納期の点でリスクが生じる。そのためある一定量については、問屋を通じてこうした海南地域の製造事業者に依頼することになるのだ。

2つめは独自ブランドで勝負する事業者。低価格競争を避け、価格設定を自分で行う事業者だが、消費者に納得してもらう価格にしていくためには、消費者や市場からの情報を常に感度を上げてキャッチし続ける努力が求められる。品質や耐久性、デザイン性、さらには環境に配慮した付加価値の高いニッチ商品を開発していくことが必要だ。それゆえ独自ブランドで勝負する事業者は、問屋任せではなく主体的に商品価格に取り組んでおり、集積地の商品の幅を広げることに一役買っている。

3つめは従来型の事業者だ。総じて経営規模が小さく高齢化も進んでいるため、地域的な生産流通パターンの中で仕事を分け合うことで設備投資や人件費を抑制し、小さな市場の中で経営を成立させている。自前で営業をかけての新規開拓は難しいため、地場の問屋にマージンを乗せて販売委託をすることが多いようだ。

海南の日用雑貨集積地では大別してこうした商品構成や流通経路の異なるタイプが混在しているが、3つめの従来型事業者は高齢化などもあり衰退しつつある。ただ従来型事業者は、独自ブランドの事業者や低価格大量生産型事業者の下請けとして利用されることもあり、地域のなかでは重要な役割を担っている。

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