COLUMN ビジネスシンカー

  • SHARE
  • LINE
2021.03

知らずに「奴隷労働の手先」になってはいないか 知っておくべき
”サプライチェーンのいま”<後編>

曲がり角に来たフェアトレード
理念をさらに発展させる仕組みづくりが求められている

コーヒー豆やカカオ豆のサプライチェーンの透明化では、フェアトレードの活動が有名だ。

フェアトレードでは、たとえばフェアトレード促進組織のフェアトレードインターナショナルが、最低価格の保証などの「経済的基準」、安全な労働環境の整備、児童労働・強制労働の禁止などの「社会的基準」、農薬の使用低減と適正使用などの「環境基準」など3分野の基準を満たした生産者にフェアトレード認証を与えている。その対象産物は、コーヒー豆やカカオ豆のほかバナナ、りんご、オレンジ、アボガド、はちみつ、カシューナッツ、ごま、オリーブ、大豆、米、じゃがいも、コットンなどの農産物に加え、サッカーボール、フットサルボールなどの工業製品にも及ぶ。

フェアトレードインターナショナルによれば、2016年現在、世界73カ国、1,400以上のフェアトレード生産者認証組織を通じて約160万人の小規模生産者、労働者に適正な利益が提供されている。日本でも多くのメーカーや小売が参加し、認証製品を扱っている。

ただ問題なのは、フェアトレードには複数の認証団体があるほか、近年では企業が独自基準でフェアトレードを謳う例も増えていることだ。

またフェアトレードは恩恵を受ける生産者が個人や小規模組織であることから、大企業が求める量に届かず、市場が拡大しにくいという問題もある。

さらに、既述したような現代奴隷などに対応する基準が盛り込まれていないなど時代の要請に対応しきれていない部分もある。このためフェアトレード団体もそのような環境変化に対応しようと基準の見直しなどを進めている。

フェアトレードの最大の問題は、アンフェアな取引をした商品が店頭に並んでいても、これを排除する強制力がないことだ。取り組み自体は称賛されるべきだが、よりフェアな交易を実現するためには、こうしたフェアトレード団体が規制力を持てるかがポイントになってくるだろう。その点からも欧米の人権デューデリジェンスを柱とした国別行動計画に融合していくことも有効だろう。

  • LINE