COLUMN ビジネスシンカー

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2021.03

知らずに「奴隷労働の手先」になってはいないか 知っておくべき
”サプライチェーンのいま”<後編>

目の前の商品の先にいる人たちのことを
少し描いてみる

英国に拠点を置く会計系コンサルティング会社のアーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッド(EY)は、現代奴隷法の対応として次のようなステップを掲げている。

取り組みは大掛かりなものになるかもしれない。

前編で紹介したANAグループは、日本初の「人権報告書」を発表しているが、まず自社事業を分析し、人権リスクが「外国人労働者」「機内サービス・物品・機内食のサプライチェーン上の労働環境」「人身取引」「贈収賄」分野にあると特定し、その進捗を開示した。

人権分野だけでない、たとえば水の移動に関しては、ウォーターフットプリントという追跡規格が、ISOで定められている。同様にCO2排出に関してはカーボンフットプリントがあり、日本では経済産業省、環境省など4省がカーボンコミュニケーションプログラム(CFP)を設立し、一定規格によって削減率を明記した「CFP宣言認定製品」制度がある。

こうした制度を取り入れることは、サプライチェーンのなかに埋もれた問題の発見解決につながっていく。だが資源の限られた中小企業にとってはかなりの負担だろう。しかしそこで諦めても目を背けてもいけない。むしろフットワークが軽い分、大手ではできない取り組みが可能だ。量ではなく、達成率やスピードで先行することもできる。

商品やサービスのサプライチェーンはどんどん延長し、複雑化していく。今後はマイクロプラスチックやナノプラスチックのような人類全体で取り組むべき難題が持ち上がってくるだろう。それには企業やその従業員、そして一般の消費者の意識をより高めていくことが重要となる。できることを見出し、着実に進める。

まずは少しだけでも想像力を広げてみよう。目の前の商品のサプライチェーンの途中にどんな人がかかわり、どんな思いで製品やサービスを提供しているのかを思い描いてみるのだ。少なくとも誰かが泣いていないか、痛い思いをしていないかを想像してみるだけで、私たちの明日は少しでもより良いものに変えられるはずだ。

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