COLUMN ビジネスシンカー

  • SHARE
  • LINE
2021.06

アフターコロナ時代を生き抜く技術発想
プリンタとエンジン技術の関係とは・・・
技術の応用力を磨け!
あの技術はこう生かされた!

鉱山から出た‘‘クズ石‘‘の
活用から始まった
3Mの快進撃

3Mは、アメリカ・ミネソタ州に本社を置く、化学品のグローバル企業だ。といってもピンと来る人は少ないのではないだろうか。一般の人々に馴染み深いのは、マスキングテープやセロファンテープなどだろう。あの「ポストイット」のメーカーと言えば、頭に「!」マークが浮かぶのではないだろうか。

3Mは粘着テープの粘着剤や接着剤を使い、こうした文具からマスク、ガウン、ゴーグルをはじめとした医療用製品、電子製品向けのフィルムをはじめとした電子部品、道路標識などの安全用品などを事業展開している。

この3Mの強みの源泉は非常に幅のある粘着技術と接着技術にあるわけだが、実は3Mは、もともと接着技術も粘着技術も持っていなかった。3Mという名称はそもそも発祥の地であるミネソタを冠したミネソタ・マイニング・マニュファクチャーという頭文字をとった名前で、その名の通りマイニングの会社である。

マイニングというと最近では「データマイニング」など、loTやICTなどのデジタル分野で見聞するが、もともとは"鉱山からの採掘 "を意味している。

その3Mがなぜ接着剤開発に力を注いだのかと言えば、所有していた鉱山からなかなかいい石が採れず、硬いクズ石しか採れなかったから。

3Mはなんとかこのクズ石に付加価値をつけることができないかと考えた。考えついたのは刃を研いたり削ったりするグラインダーに利用することである。グラインダーをつくるには硬いクズ石を集めて接着する強力な接着剤が必要だったのだ。

3Mはより強固なグラインダーをつくるために接着剤の技術を磨いていった。その技術はやがてさまざまな製品分野に広がっていった。接着の対象もグラインダーだけではなく、木や紙、金属といったオーソドックスな素材、さらに石油産業から生まれた化学繊維やプラスチック、ゴム、ビニールやポリプロピレン、炭素繊維等々、新素材が出るたびにそれらを接着する接着剤が求められた。

当時、アメリカではさまざまな産業革命が起きていた。石炭から石油へのエネルギーシフトが起こり、ヘンリー・フォードがガソリンを燃料としたT型フォードを世に出して、自動車の量産化革命が起きた。同時に道路、鉄道もアメリカ中に張り巡らされていき輸送革命が起こった。

当初自動車のガソリンなど燃料に限定されていた石油も、やがてさまざまな化学品の原料となっていき、化学産業が興隆する。石油を原料とした新素材は衣料原料や建材、食器、化粧品、自動車や列車、船舶などの内装などの樹脂材としてあらゆる分野に広がっていった。さらに時代が下るにつれ、単一素材だけではなく、ガラス素材や樹脂、金属などを貼り合わせた複合素材と呼ばれるものがたくさん生まれ、その耐久性もさまざまに設定されていった。3Mはその数多の複合素材とその耐久性・品質を担保するために、さまざまな接着剤を生み出していったのである。

3Mが秀逸だったのは、接着剤を開発していったことだ。接着剤は一度接着したらまず剥がれないことがその目的と効能になるが、しかし必要に応じて剥がす必要性も出てくる。公共の掲示板などは一旦ポスターなどが貼られても、掲載期限が来れば剥がす必要がある。そこで生まれたのが何度も剥がすことができる粘着剤だ。前出のポストイットは、ほどよい粘着剤から生まれた。

いまや3Mをマイニング会社とは言わない。3Mの" M "はかつての名残りを表示しているだけとなったのだ。

  • LINE