COLUMN ビジネスシンカー

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2019.12

【new comer&考察】
ガラパゴス化再考
脱コモディティ化を目指すなら、ガラパゴスでしょ!

ネット化・デジタル化が進んだ現代では、新しい商品やサービスがあっという間に広がり、差別化、差異化が難しくなってしまう。ブルーオーシャンだと思って飛び込んだ瞬間から、真っ赤なレッドオーシャンに変わってしまう市場も枚挙に暇がない。

こうした時代は、逆に世界のトレンドを気にせず、独自の「ガラパゴス化」が市場を切り拓く可能性がある。

例えばカメラはすでにデジタル化が進んで、オートフォーカス、手ブレ補正、ミラーレス化が進み、同じ被写体からミニチュア風やトイカメラ風などさまざまな絵柄が表現できるが、いま静かなトレンドとなっているのが、昔ながらの紙焼き写真が出てくるカメラだ。

数年前より、フィルム内蔵カメラ「写ルンです」の最市場化、さらに最近はその場でプリントができる「チェキ」が人気となっている。いずれもフィルム時代を知らない世代が、フィルムを「新しい」と思って買い求めた結果だが、デジタルカメラに市場が奪われたなかでも、製造を続け、技術を絶やさなかったことが、現在の興隆のベースとなっている。

とくにチェキの人気は、それまでカメラ店にしか置かれなかった商品が、雑貨店などに販売ルートを広げたことで、「かわいいカメラ」から「かわいい雑貨の1つ」として受け入れられたことが大きい。

ほかにガラパゴス化の代表としては、ヤマハ発動機の電動アシスト自転車のPASシリーズがある。1993年に発売されたPASは、とくに小さいお子さんを持ったママチャリを操るママ、パパ世代に支持され、現在までそのスタイルやコンセプトを変えずに進化し続けてきた。

当初1回の充電で20km程度だった走行距離も、最新型では56kmまで伸び、また充電時間も10時間から3.5時間にまで短縮された。いまや保育園児などを持つ家庭のベーシックビークルとなっている。ここ数年でも毎年10%以上の伸びを続けており、普及も家庭に1台に迫ろうとしている。伸びの背景には通学用の推奨ビークルとしても学校が積極的に推奨していることや、免許を返納した高齢ドライバーが日常の足として使うケース、あるいはインバウンドの伸びで、観光地の足としてレンタサイクル、シェアサイクルの1つとして普及しているなど、ニーズの多様化がその背景にある。

PASはガラパゴス商品の典型で、欧州の自転車先進国ではPASという完成車としては販売していないが、その電動アシストユニットを完成車メーカーに提供している。これは、欧州各国でその規格や法的制限などに違いがあるため、完成品を現地に合わせるのではなく、ユニットを提供するほうが受け入れられやすいとの判断からだった。

PASが開いた市場は世界でも確実に伸び、国内ではブリヂストンやMIYATA自転車、パナソニックなどの自転車メーカーが、海外でもドイツやスイスなどで電動アシスト自転車メーカーが勢力を伸ばしている。その技術は、電動アシスト車椅子に転用され、来年のパラリンピックで更なる市場拡大が期待されている。

実はヤマハは時代に先駆けたユニークな商品を送り出している企業として知られる。あくまで自転車の延長として開発したPASに対して、日本のスクーターの原型となる「パッソル」シリーズなど、ガラパゴス的発想で生み出された商品も多い。

一方でライバルのホンダは独自のスカート型泥除けをつけた「スーパーカブ」という世界的ベストセラー車(世界生産台数累計1億台達成)を生み出したが、これも元々は創業者の本田宗一郎が、自転車で重い荷物を買い出しに行く妻を楽にさせたいという思いから誕生した、原動機付自転車が原型だった。その形はまさに自転車にエンジンをつけたもので、形はPASに近かった。

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