COLUMN ビジネスシンカー

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2021.09

混迷を深めるVUCAの時代だからこそ。 知っておきたい
「大人の義賊史」

義賊の原点とされるシャーウッド森のロビン・フッド

「『シャーウッドの森を通るときは気をつけろ。緑の服を着た犬めが食いつくぞ!』

大貴族やお金持ちの僧侶や大地主たちは、こういってロビンたちをおそれた。なぜならロビンたちは、とほうもない税金や地代や罰金をとりたてて、貧乏な人々を苦しめている者たちが、シャーウッドの森を通りかかると、たちまち身ぐるみをはいでしまったからだ。」

ロビンとは、イギリスの伝説の義賊、ロビン・フッドのこと。ロビン・フッドは大貴族や大金持ちにとっては、"緑の服を着た危険な野犬"に過ぎなかったが、日本でもよく知られたハワード・パイルの『ロビン・フッドの愉快な冒険』では、貧乏な人々にとってはまったく逆の存在として描かれている。「『こまったことがあったら、シャーウッドの森へ行くことじゃ。きっとたすけてくれるからな』

貧乏な人々は、男も女も子供もこういってロビンたちを愛し、うやまった。なぜなら、大貴族やお金持ちの僧侶や、大地主たちにうばいとられたものを、たちまち取り返してくれたからだ。こうしていつのまにか貧乏な人々は、ロビンたちを『楽しき人々』と呼ぶようになっていった」

ロビン・フッドはイギリスの中世に起こったバラッド(物語・寓話)中の人物で、ロビン・フッドの物語はその語り部となる吟遊詩人などによって作り上げられていった。留意すべきは、ロビン・フッドが奪うものは、「大貴族やお金持ちの僧侶や、大地主たちに"奪いとられた"もの」を、取り返してくれることにあるということ。

中世ヨーロッパは、荘園の領主が農民を土地に縛り付けて年貢を取るいわゆる封建システムだったが、次第に貨幣経済が浸透し、領主も貨幣が必要になっていく。そのため物納だった年貢が次第に貨幣に移行し、農民側では作物だけでなく加工品をつくって貨幣に換える手工業が発達していく。

しかしこの頃の領主は軍事奉仕を求められていたため、その負担で次第に困窮し始める。困窮した領主たちは課税率を高めるなどして統制を強めていった。これに反発した農民が一揆などで抵抗するようになっていったのだ。

本来得られるはずの労働の"果実"が、領主たちの一存で奪われてしまったことに対する反動がこのロビン・フッドの物語の背景にはある。

もちろん実在した義賊たちの行動や立場は、それほど明確で単純なものではない。

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