COLUMN ビジネスシンカー

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2022.01

あらゆる企業が押さえておきたい トヨタのTPS(トヨタ生産方式)と現場発想の原点

5「横にたくさんできる」人になる

トヨタに「多能工」と「多台持ち」という2つの考え方がある。多能工とは多種類の機械を操作できる作業者のことで、いざとなったら自分の担当以外の作業をすることができる。多台持ちは、同じ種類の機械を何台も担当することができる人のこと。

今は専門的な部分がどんどん分化して、専門家やスペシャリストがもてはやされる時代だが、技術進化のトレンドが大きく、変化しやすい時代だ。そういう時に「横にたくさんできる」というスキルを持っていれば、たとえ業務に変化が起きても長く働きやすくなる。また幅広い知識や視点から他の部署を巻き込むようなアイデアを出して率先して実行できる人材は、会社でも重宝される。

他人よりも秀でた専門ジャンルを極めるのは大切だが、同時に会社の部署を横断するような知識や業界に関する幅広い知見を身につける、いわゆる「T型人材」という意識を持つことも重要なのだ。

6 品質は工程で作り込む

これは自分の工程で品質を保証できるまで作り込む、つまり不良品が出ないようにすることだ。

ジャスト・イン・タイムと自働化の実現のために必須となる考え方である。最近のIT業界では、多少の商品に問題があっても、まず先行して世の中に出して問題があった時に修正していくという考え方が増えているが、車のように商品が人の生死を左右するような場合は、このような考え方はできない。もとよりIT業界でも情報漏洩などの企業そのものを毀損するような事態が、昨今多く見受けられる。

自分の工程に責任を持って品質を保証し、不良を出さないことが市場での高い評価につながることは言うまでもない。

商品の品質は、最終的に検査がしっかりしていれば不良は出ないという考えもあるが、検査そのものは価値を生まない。出来上がったものの良し悪しを判断し、精度高く判定できても、検査では製品そのものの品質は変わらないのだ。

この考え方はオフィスの仕事でも当てはまる。上司がいるから、チェックする人がいるから、誰かがカバーしてくれるだろうという考えは、大きなミスの源になる。

特に大きな組織でセクションに壁があるような場合は、お互い責任のなすりつけ合いに発展する可能性もある。自分がする仕事の品質は自分の工程で作り込む。それはどのような現場でも当てはまる。

7 者に聞かずに物に聞く

「者」とは人のこと。「物」は現場や商品・製品のことだ。人は何か失敗した場合、どうしても自己防衛本能を働かせてしまう。100%正直なことを上司には言わないもの。よしんば100%正直であったとしても、本人がことの重要性を自覚してない場合や未熟であった場合は、問題の原因が分からないこともあり得る。

だからこそ何かあった時は、監督者は現場に自ら足を運ぶべきなのだ。

何かを改善する際も同様だ。トヨタでは何か改善すべき無駄を見つけるために定点観測を行う。ひとつの場所に立ち続けてじっと物事の流れを見続けるのだ。

あるトヨタマンは、大野耐一の懐刀として知られた鈴村喜久男に指導を受けたことがあった。鈴村は工場内にチョークで直径1メートルほどの丸を書いて「ここに立って現場を見てみろ。30分動くなよ」と言われたそう。

その人は「なぜこんなことをしなければならないのか」と思ったが、しばらく立っていると、不思議なことに「あの人は動き回るけど、あの人は動きが悪い」「あの人は忙しそうだが肝心な作業をしていない」「今やらなくてもいい仕事をしている」というようなことが見えてきたそう。現場に行って間近に見ているから分かることがある。あるいは少し離れて俯瞰して見ることで分かってくることもある。

それは目だけではなくて特に現場では、音や匂い、温度、手の感触など、五感を使って捉えるとよりはっきり分かってくる。「通常と違う何か」を感じた時、それはもしかしたら大きなトラブルの予兆かもしれない。

それはオフィスでも同じだ。彼はいつもと声の調子が違う。彼女は目つきが違う。あの先輩は歩き方が違う。そういった周りの人の変化を感じ取ることで、いろいろな予兆を察知し、次の予防対策が打てるものなのだ。

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