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NFT=非代替性トークンが広げる可能性

NFTが注目を集めている。と書くと、どこかの新たな金融政策と思われるかもしれないが、さにあらず。かといってさほど遠い関係でもなさそうだ。

NFTとは「Non fungible token(ノン・ファンジブル・トークン)」の略で日本語では「非代替性トークン」と呼ばれる。トークンという言葉も最近よく使われるが、これは「代替貨幣」「商品やサービスの引換券」などと言った意味がある。歳末のくじ引換券や割引クーポンなどがイメージしやすいだろう。

トークンそのものは商品や通貨の代わりとなるクーポンや商品券のようなものだが、偽造されて悪用されれば、その価値と信用はまたたく間に下がってしまい、経済に混乱を来す。

偽クーポンや偽札といった偽造やフェイク市場は人類が誕生以来の課題だった。特にもっとも交換性の高い代替物である通貨や紙幣などは、世界中のいたるところに存在している。それでも金貨や銀貨は重さや鋳造の模様などから判別でき、また紙幣では専門的な印刷技術を伴っていたため、印刷技術を高度化することである程度の抑止ができた。しかしデジタル技術が進展した今、事情は変わった。本物か偽物かが特定しにくくなるだけでなく、そもそもどれがオリジナルかコピーかが識別できなくなってしまった。

確かにデジタル化技術で世の中は便利になった。フィルムだった写真がデジタル化によって同じ映像が何枚もプリントでき、また劣化することなくいつまでも保存できる。一方で撮影した作品が、簡単にコピーできるようになり、苦労して撮影した写真のありがたみ、希少性が薄れてしまった。それどころか、コピーしたデジタル画像を振りかざし、「これがオリジナル」だと言っても反論出来ない事態を招くようになった。

とくにこうした芸術活動をする人々にとっては、映像や音楽の海賊版は世界中の問題となっていた。とりわけ問題となっているのは、日本の主要産業の1つで、世界に誇る漫画・アニメ市場である。国際訴訟などにより世界中で取締りが強化されるなかでも、その市場は広がっており、被害額は正規市場を上回るほどになっている。

そこでにわかに期待されているのが、このNFTなのである。

非代替性と称しているように、何ものにも代えることができないオリジナル性を証明するトークンなのだ。つまりNFT付きのデジタルデータであれば、オリジナルのデジタルアート作品として認められ、その創造性と市場性にあった価格で取引することが可能となるのだ。

2021年3月11日には、デジタルアート作品を手掛ける作家、米国のマイク・ウィンケルマンさんのNFT作品「Everydays-The First 5000 Days」が、イギリスのオークション「クリスティーズ」で、6930万米ドル、約75億円で落札されて話題となった。

近年は富裕層の金余り現象が話題となっているが、金融市場でのマネーゲームを避けた、とくに若手富裕層がその対象をアートへ傾斜させていることもあり、アート市場は空前の高値が続いている。NFTはこの傾向に拍車をかける可能性がある。

対象となるのは芸術作家の作品だけではない。同月22日にはツイッター社の創業者ジャック・ドゥーシーさんが2006年3月21日に行ったNFT初ツイートが、291万米ドル約3億1000万円で落札されている。

つまりNFTによってそのオリジナリティ、”初”が証明できれば、アート作品に限らずデジタルに記録された事象がコンテンツ化し、高値で取引される可能性が出てきたのだ。

さらにNFTによる証明は身の回りにあるレア物を高値に引き上げ、市場化するチャンスを持つ。たとえば、有名アスリートがかつて使ったシューズやグローブ、練習ギア、あるいは合宿に使った部屋などもその対象となりうるからだ。

同級生のなかから将来世界的なアスリートや漫画家、作曲家や演奏家、冒険家などが生まれる可能性があるのであれば、いまのうちに愛用品を譲ってもらうのも手かもしれない。

NFTが急に話題となったのは、これまで仮想通貨に活用されてきたブロックチェーン技術のトークン規格が、国際基準化されたことがある。現在の仮想通貨のプラットフォームはイーサリアムというブロックチェーンプラットフォームの規格「ERC721」に則った形で扱われる。ブロックチェーンは別名「分散取引台帳」と呼ばれるように、取引内容が公開される。つまり誰が誰といくらで取引したことがすべてわかるため、「ずる」をすればその人物が特定できる仕組みとなっている。またブロックチェーンは暗号資産のプラットフォームとなっており、取引自体は暗号化されて行われるので、第三者がそのコンテンツを勝手にコピーや改ざんができないようになっている。

ではそのNFT付のデジタルコンテンツを手に入れようと思った場合はどうするか。すでにNFTマーケットは立ち上がっており、その多くがイーサリアムのERC721規格を用いたマーケットになっている。

ほとんどが日本円以外の決済となっているが、GMOグループ「AdambyGMO(アダムバイジーエムオー)」がデジタルアートを対象に日本円決済可能なNFTマーケットを開いている。

ほかにはデジタルアート、ゲーム、トレーディングカード、デジタルミュージック、ブロックチェーン・ドメイン、ユーティリティトークンなどを対象にしている「OpenSea(オープンシー)」、デジタルアート、ゲーム、フォトグラフ、デジタルミュージックなどが対象の「Rarible(ラリブル)」、デジタルアートを対象にした「SuperRare(スーパーレア)」、暗号資産などで知られるコインチェックが展開するゲームやトレーディングカード対象の「CoincheckNFT」が知られる。

いまのところ一部の熱狂的ないわゆる「イノベーター」が先行投資を行っている感が強く、一部「バブル」との指摘もなされている。いずれ市場が広がりデジタル世界でも「目が肥えて」くれば、資産活用の手段や、新たなアーティストの登竜門として人口に膾炙していくだろうし、新たなライフスタイルの起点になることは間違いない。

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