COLUMN ビジネスシンカー

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2022.02

【new comer&考察】
スマホの位置情報が、日本のインフラとビジネスを変える!
位置情報×オルタナティブデータで広がるニュービジネス

建設機械の位置情報にエンジン回転数やオイルの汚れ、旋回の様子をセンサーでモニタリング。
コムトラックスで中国シェアを伸ばしたコマツ

 見守る対象が人ではなくトラックや重機などの"働く機械"となれば、盗難防止になるし、さらに稼働状況がわかれば、効率的な配車によって作業効率や生産性を高めることができる。
 この位置情報技術を活かして成長を果たした企業の1つに世界的建設機械メーカーのコマツがある。コマツは自社の建設機械にさまざまなセンサーを取り付け、機械の位置だけでなく、オイルの温度、振動、エンジンの稼働時間などのデータを分析できるようにしたシステム「コムトラックス=Komatsu Machine Tracking System」を開発。このコムトラックスにより、ユーザーはオイル交換や消耗品の適切な交換時期、あるいは保守の適切なタイミングが把握できるようになり、故障による作業停止時間を減らすことができた。コムトラックスが秀逸なのは、故障が起こった場合、ユーザー企業より前にコマツ側に情報が飛ぶことだ。どこにある機械のどの部品がどのような状態で故障したという情報が最寄りのサービスセンターにいち早く届くので、コマツのサービス担当者は短時間で故障現場に向かうことができるのである。
 作業単価の高い重機の稼働は、停止時間が長引くほどユーザーにとって痛手になる。もとより重機の稼働現場は人里離れた場所にあり、海外ではアクセスするだけで数日かかることもザラだ。その時間を減らすメリットは極めて大きいのだ。
 さらにこうした位置情報ビッグデータによる適切な予防保全が行われた機械は状態が良いため、下取り時にも高値がつく。
 またエンジン稼働時間分析から、機械の適切な配置も可能となる。エンジンは稼働しているものの、積み込みや掘削などの本来の作業が行われていない機械が多いとなれば、余剰な機械を別の作業現場で使ったり、あるいは他社にレンタルすることも可能になる。
 このコマツの位置情報と稼働分析の力を見せつけたのが、リーマンショック後の中国市場だった。当時世界中の建設投資が手控えられるなか、同社が販売したGPS機能付き建設機械が中国で盛んに稼働していることがわかり、中国での販売を強化。コマツのシェアは大きく広がったのである。

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