COLUMN ビジネスシンカー

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2022.06

準備OK?今年4月から実施されたパワハラ防止法
パワハラだけではない
人材不足時代の
ハラスメント対応術

セクハラ、
マタハラ対策を強化

 この度の法改正で注目されたのは、とくにセクハラとマタハラだ。
日本の労働力が不足しているのは、偏に出生率が下がり続けているからだが、その出生率を上げるためには、まず出産適齢期の女性が安心して出産でき、子育てができる環境を社会が用意することに尽きる。妊娠したからといって暗に退職を促すような空気や、子育てしている女性が時短勤務を取りにくい環境だったり、復帰後に心無い発言を受けたりするようでは、安心して出産どころか結婚する気にもならないだろう。
 こうしたハラスメントで、もし会社が持ってるポテンシャルを引き出せていないとすると、その会社のトップは経営者失格の誹りを受けても、仕方がない時代になったのだ。
 パワハラやモラハラを放置すると、社員の退職や長期休職、最悪の場合自殺することもある。
 もし仮にパワハラでうつ病になり、自殺したとなると損害賠償で5000万円から1億円は必要だと言われている。金額以上に失われるのが、企業としての信用だ。
 少し古いデータだが、国立社会保障・人口問題研究所が2009年に行った試算では、うつ病・自殺による経済損失は2.7兆円になるという。もちろんその理由がパワハラなどのハラスメントによるものではない。
 日本でパワハラを最初に定義した「パワハラほっとライン」主催の岡田康子さんが行ったウェブアンケートによると、パワハラを受けた人の約3%が自殺未遂や自殺を考えたことがあると答えている。
 さらに入院を経験した人が3%、通院・服薬が23%、心身の不調を訴えた人が40%いるという。7割の人が、パワハラでなんらかの悪影響を受けていることが岡田さんの調査でわかったのだ。
 影響がないと言ってる人でも、自分が影響を受けていることに気づいていない場合もある。とくに中高年の場合は、体調の変化を年齢のせいにすることもあり、必ずしもハラスメントの実態を反映しているとは限らない。実態としてはかなりの経済損失がパワハラやモラハラなどによってもたらされていることが言えるだろう。
 この調査で注視しておきたいのは、パワハラやモラハラでうつ病になったり、「自殺する人は、仕事ができる人が多い」ということだ。決して仕事ができない(とみなされる)から、メンタルが弱いから、ハラスメントを受けるのではない。
 売上が最も多い人や、若くリーダー的役割を担っている人、マルチな活躍をしている人など、いなくなっては困るという人が影響を受けやすいのが、会社、組織のパワハラやモラハラの実情なのだ。
 では、どんな人がハラスメントを起こし、どんな状況でハラスメントと認定されるのだろう。
 代表的なハラスメントを個別に見ていこう。

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