COLUMN ビジネスシンカー

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2019.03

経営者必読! どん底から再生する経営 生死の淵で守るべきもの。捨てるべきもの

第三者破産で負債を免責

 直樹さんは自己破産をしていなかった。会社更生法を申請する時に弁護士から、自己破産には裁判所に納める予納金を含めて、400〜500万円かかると言われたのと、個人保証をしている会社の負債状態が複雑すぎて、全貌を把握した書類を作れなかったからだ。

 倒産から3ヶ月。直樹さんは知人に代表者になってもらい、有限会社を起こす。直樹さんの父親は、相当な人脈を築いており、芸能関係者やその知人が支援してくれた。芸能の世界にも「騙す」「騙された」の話は転がっており、しっかりした人脈を築くことはその世界で生き延びるための手段でもある。また浮き沈みの激しい世界であるため、飲食店などを経営する芸能関係者も多く、飲食チェーンをやっていた直樹さんの父親にはたくさんの接点があったのだ。こうした支援があって、池袋で「ばんからラーメン」を旗揚げする。

 父親の築いた人脈はまさに財産だった。

 取引先も売上が上がってから支払うという支払い条件にするなど、直樹さんに有利な支払い条件にしてくれた。

 「支援していただいた方のためにも、頑張らないといけないと思いました。自分ひとりでは何もできない」ということを身をもって感じた直樹さんは、立ち上げ後すぐ、自分の分身をつくることを考える。バイトの人間にノウハウを教えて独り立ちできるようにしていったのだ。いわゆるフランチャイズだが、「暖簾分けのような感じだった」と言う。店舗を増やすのは、少しでも売上を伸ばして支援したくれた人に対して恩返しをするためであり、愛着が持てて、自分のラーメン店はうまいんだという自信を持ってもらうことが大事だと直樹さん。

 店が増えるたびにその店名も変えていった。これはまだ更生期間中であり、またフランチャイズだと思われると世間の注目を集め、管財人から資産を狙われないようにとの配慮からだった

 2002年、栄商事の更生期間が終わり、栄商事は更生会社から普通の会社となった。同時に管財人が直樹さんに第三者破産を申告する。第三者破産は、債権者が破産を申し立てる破産で、この破産宣告で、2003年3月には免責を受けることができたのだ。破産するための費用は1円もかかることがなかった。

 そしてこれを機に、さきほど一店一店別名にしていたラーメン店をすべて「東京豚骨ラーメンばんから」に統一する。

 直樹さんは、債権者からの取り立てに怯えることなく、事業に専念できるようになったわけだが、くるまやラーメンのように店舗数を誇るようなことはしないという。たとえ出店すれば成功すると分かっている土地があっても、借金してまで出店しないというのが、東京豚骨ラーメンばんからの方針。「大きいことが大切なのではなく、強いことが大切だと思うようになった。時代や環境にも負けず、大きな組織にも対抗できる」

 倒産したからこその経営哲学だ。

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