COLUMN ビジネスシンカー

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2019.05

現有資産を捉え直して、儲けのポイントを探る! 令和の時代に押さえておきたい儲かるビジネスモデルの研究

買い取り専門の業態に組み換え、成長した中古車のガリバー

 こうした顧客の定義替えは、新たな事業や、新たな産業を生みだすこともある。

 中古車買取りで知られる「ガリバー」もその1つ。顧客の再定義をして伸びた。もともと中古車業は顧客から古くなったクルマを買い取り、中古車を求める顧客に利益を乗せて売るビジネスモデルだった。いわゆるC to B to Cというモデルだ。中古車業者が利益を高めていくには、いかに仕入れ値を安くし、いかに高く売るかということに尽きる。

 クルマを持ち込む顧客からすると、「安く買い叩かれる」という不安がつきまとうことになる。一方業者側からすれば、高く買い取ると利益が圧迫されるし、利幅を上げようと高値で設定するとなかなか売れず、在庫リスクが高まる。

 そこでガリバーは、買い取った後の売り先を一般ユーザーではなく、同業者とした。買い取った中古車は、店頭で売らずに同業者が集まるオークションに出品することで、在庫の回転率を高めたのだ。

 従来の中古車業では買い取りから販売まで2〜3ヵ月かかっていたものが、ガリバーが生み出したビジネスモデルでは、数日に短縮された。ガリバーはこのモデル構築以降、一般向けには「買取専門」という看板を掲げ、業容を拡大してきた。

 もちろんビジネスモデルを変えることは、さまざまな基準や工夫が求められる。

 もともと中古車業界にあった査定の不透明さを払拭するために、クルマの事故歴や走行距離、年式、装備などを規格化し、本部が一元管理。この仕組によって、顧客はどの展示場にクルマを持ち込んでも、ブレのない買取り価格が保証されるようになった。

 さらに売り先をオークションにしたことで、買い取ったクルマを再販する販売コストがなくなり、価格はその時々の相場に一定の利益率を乗せるだけとなり、買取価格が高く設定できるようになった。

 ガリバーは売り先顧客を一般ユーザーである「C」から業者である「B」に定義しなおしたことで(すなわちC to B to Bとするモデル)、買い取り専門業という新たな業態を創造し、市場を拡大させたのだ。

 一方でビジネスモデルを変化させることは、既存客を失うリスクも発生する。実際にガリバーの店頭でいい中古車を買いたいというニーズも出きた。そこでガリバーでは、買取り後数日間だけ自社のサイトに画像を載せ、一般ユーザーへの販売も行うようにしている。その期間に売れない場合は、相場に一定のマージンを乗せてオークションで販売すればいい。

 ガリバーに限らず成長を続ける企業は、作り上げたビジネスモデルに執着することなく、どんどん進化させていく点が共通している。

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