COLUMN ビジネスシンカー

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2019.05

現有資産を捉え直して、儲けのポイントを探る! 令和の時代に押さえておきたい儲かるビジネスモデルの研究

同業者も顧客にして成長した美容チェーン「デイ・バイ・デイ」

 千葉県千葉市に拠点をおく美容室チェーン「デイ・バイ・デイ」も、「顧客が誰であるか」を再定義して業容を伸ばした美容室だ。

 美容室というと都心の高級美容室で指名を受けるカリスマ美容師のイメージがあるが、カリスマと呼ばれる美容師は、ほんの一握りだ。若い時代は同じ世代に比べて所得も少なく、それ故、離職者が多い業界でもある。若い世代が他業種に比べ収入が少ないのは、「修行」という考えが広く浸透しているためだ。収入を増やすにはいち早く独立して店を持つことだが、それには一所懸命修行し、早く技術を身に付けることが必要になる。

 それは同時に早く店の戦力になってもらいたいという店側の思惑とも一致する。

 しかし実際は腕の良い美容師が独立すると、店側にとっては戦力ダウンのうえ、顧客の一部を持っていかれる場合もある。こうしたことが度重なると明らかに店の収入にも響き、人材育成の気力も萎えてしまう。

 離職率の高い職場は、指導するほうも、指導を受けるほうも、どこかに「どうせほとんど辞めてしまうのだから」という、ネガティブな思考を抱きがちで、本来注力すべき「顧客にとっての提供価値」になかなかたどり着かない。

 デイ・バイ・デイの社長の平賀幸夫さんは、こうした美容界が抱える構造的な問題を顧客の再定義で解決を図っている。

 これまで漠然と店に来る女性を顧客としていたものを、明確に「働いている女性、子育てで忙しい女性など『美しいヘアスタイル』を求める顧客と定義しなおし、また独立していった"弟子"たちや、ほかの店から独立したものの、経営のうまくいかない美容室に対して経営支援を行うことにしたのだ。

 この再定義を機に、同社では実力のある美容師には独立を支援する独自の「のれん分け」システムを開発した。独立者が本部にのれん代として払うロイヤリティは、最初の3年間が利益の5%。その後4%に下がり、さらに複数店舗のオーナーとなることで1%下がり、売り上げが月間1000万円を超えるとさらに1%下がっていく。独立者が頑張れば頑張るほど、儲かる仕組みとしたのだ。

 美容業界の離職率が高い背景には、技術習得までの期間が長いこともある。美容師は一人前になるまで従来、5年から7年かかると言われ、その間シャンプーなどの溶剤で手荒れが続く場合もあり、とくに皮膚に敏感な若い女性などにはかなり辛いものとなる。平賀さんはこの一人前になる期間を一気に1年に縮める仕組みを考えた。さまざまなヘアスタイルを3つのパターンと12スタイルに集約し、その12スタイルを1ミリ単位のヘアカット技術で実現できることを"一人前"の基準としたのだ。

 同社では、新入社員に対してOJTとは別に、年間1200時間の研修を設定し、実務試験を実施している。これは一般的な美容学校の授業時間を上回っている。平賀さんは「この研修を受けることで、全国トップレベルの技術が習得できる」と話す。

 つまり顧客をヘアメイクにやって来る客だけでなく、同業者とすることで、同社のビジネスモデルが変わり、儲けの構造が変わったのだ。ガリバーは売り先である顧客を同業者に変えることで、ビジネスモデルを変えたが、デイ・バイ・デイは顧客を従来の客を絞り込んで差別化を図ると同時に、同業者という新しい顧客を加え、さらに経営支援という数年契約をベースとした安定収入を得ることで事業を広げていったのだ。

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