COLUMN ビジネスシンカー

2019.07

2500年前からの知恵 「孫子の兵法」に学ぶ

古今東西の皇帝や武将、名経営者をとりこにした兵法の古典

 日々新たな経営戦略や経営論が、書店やインターネット空間を埋めている。経営やビジネスの戦略を戦争になぞらえる例は、古くからあるが、今なお現代に語り継がれ、支持を受けている書が、中国の兵法だ。

 中でも「孫子の兵法」は、今から2500年も前に書かれた古典中の古典。著者は、中国春秋時代の兵家「孫武」とされているが、実在したのかは定かではない。謎の多い孫子の兵法だが、その説くところは、中国国内はもとより、古今東西の軍師や武将、知識人、経営者に影響を与えた。

 あのフランスの皇帝ナポレオンもフランス語訳で読んで戦略に応用したと言われ、また日本の戦国時代の武将たちも影響を受けている。武田信玄もその一人。軍旗に記していた「風林火山」は孫子の兵法の「軍争編」にあった、「其疾如風、其徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷霆」から取ったと言われている。その読み下し文の「移動するときは風のように速く、静止するのは林のように静かに、攻撃するのは火のように。隠れるには陰のように、防御は山のように、出現は雷のように突然に」は、武田軍としての戦いの理想を掲げたものだった。このようなことが本当にできたとしたら、まず相手は恐れおののくだろう。

 近代では、アメリカの国防総省でも孫子の兵法の研究がなされている。

 経営者の間でも愛読した人は多く、ソニーの創業者の一人盛田昭夫さんや、いまや巨大グループとなったソフトバンクの創業者、孫正義さんなどが活用したと言われている。あのマイクロソフトのビル・ゲイツさんも愛読していた。

 それにしても2500年前と言えば日本の歴史では、縄文時代。

 まだ有史以前と言ってもいい時代に、戦のあり方をまとめた書が残されたことじたいに驚かされてしまうが、それ以上に驚きなのが書かれた内容だ。シンプルに纏められた内容は、多くを語らず、しかしながら戦い方のツボを抑えている。