COLUMN ビジネスシンカー

  • SHARE
  • LINE
2020.02

いま世界が注目! SDGs時代に考えたい 日本人の知恵「三方よし」

薄利でしっかり利益を取る。だが安売りはしない。だから工夫=イノベーションが必要

近江商人と言えば、「商売は牛のよだれ」という格言でも知られる。商いは利益を高く設定するより薄く広いほうが、長く商売ができることの箴言でもある。それのみだけでなく、公共性のほうに向かっていくのはなぜなのか。

藤野さんは、近江一帯が持つ宗教的風土を挙げる。

近江一帯は、昔から浄土真宗の信者が多い地域で、来世における極楽浄土を信じる者が多かった。よって現世での行いは本人が他界した後も後継世代にも影響を与えると考えていた。

「 主が死んでも店が残りますから、その行く末というのはすごく不安なんです。死んだら後世の手助けはできない。だから神仏にお願いする。後世のためにしっかり残し、商いを継続させるために、社会奉仕や施しをするんです」(藤野さん)

もう1つは、浄土信仰の母体となった天台宗が説く「山川草木悉皆仏性」という自然に対する畏敬の念だ。藤野さんらは、「自然という大いなるものへの畏れが結果として近江商人のコンプライアンス遵守や浮利を求めない経営姿勢を生んだ」と読み解く。

「近江商人のほとんどの家訓には『薄利で商売をしなさい』とある。その一方で『安売りはいかん』とも言っている。『安売りせず、然るべき利益はしっかりもらいなさい。そのために工夫した上で儲けすぎないというのが近江商人の基本なのです』」。

工夫、すなわちイノベーションはいつの時代にも求められる。長寿企業としての現代に残っている近江商人は、昔ながらのやり方を十年一日の如く墨守してきたのではない。日々のイノベーションの結果が長寿の歴史を築いたのである。

  • LINE