COLUMN ビジネスシンカー

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2020.04

先の見えない時代、ビッグデータ時代だからこそ学びたい 勝負師たちの「勘」

トヨタ、ソニー、ソフトバンク、サントリー名経営者がもつ「勘」とは

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。いつ収束するのか先の読めない状況となった。しかし先の見えない状況であっても、時代の先を読み、変化を先取りして次の一手を打っていくことは求められる。そのためには科学的で正確なデータを集め、的確に分析し、合理的に判断をしていくかにかかっている。

だが一方で、経営の最終的判断は、「勘」だと考える人とも多いようだ。実際名経営者と呼ばれる人たちは、そういった勘が働く。

トヨタの元会長の奥田碩さんはその一人だ。奥田さんは社長時代にプリウスを始めとするハイブリッドカーの開発を加速させる一方で、それまで「お金がかかるので参入してはいけない」といういわばトヨタの不文律を破ってF1 への参戦を決め、業界関係者を驚かせた。エコという未来の柱を立てながら、一方でガソリンをガブ飲みするF1 に参加するのは、筋が通らないようにも見える。奥田さんはヨーロッパ市場の取り込み、ひいては世界のクルマ市場を考えるとF1 というブランドはたとえ優勝台に登らなくても、それに見合う価値があると読んだのだった。

奥田さんは株価をよく当てて、周囲を驚かせていたと言う。それだけでなく競馬もやる人でこれもよく当てたそう。独特の勘とセンスがあったからこそ販売台数世界トップを導いたのだと言えよう。

ソニー創業者の井深大さんも勘の鋭い人だった。井深さんはソニーの前身の東京通信工業を戦後間もなく立ち上げた時、トランジスタラジオをやってみようと考えた。当時トランジスタのラジオの製造はアメリカのメジャーな会社も実現しておらず、しかも特許料が900万円。年間利益が吹き飛ぶような巨費だった。

当然、社員は反対した。しかし井深さんは、「トランジスタを使えば、胸ポケットに入る超小型ラジオができる。日本人は昔から小型のものや小さくまとまったものが好き」だと説き伏せた。かくしてソニーのトランジスタラジオは大ヒットし、世界のソニーの足がかりを掴んだのだった。

井深さんが亡くなった時、OB でノーベル賞物理学賞受賞者の江崎玲於奈さんは、弔辞で「未来を考え、見ることで、現在と明日を知る人だった」とその独特の直感力と洞察力を称えている。

ソフトバンクの創業者孫正義さんも、勘の鋭い経営者だろう。創業時から「豆腐屋のように1丁(兆)、2丁(兆)いう売り上げを数えるようなビジネスをする」と公言していた孫さん。自己資本の数倍もの買収を大胆に仕掛けたり、度肝を抜くプランを打ち出したりするのは、常識や合理性だけでは捉えきない。

サントリーホールディングスの元社長、佐治信忠さんも勘を大切にする経営者の一人だった。佐治さんは勘を、「普段の勉強とか経験から自分の中に蓄えてきたものだと思います。この勘をどう磨いていくか。どうすればいつも勘が冴えるかを考えること、それが経営者にとって重要じゃないですかね」と語っている。

こうした勘は持って生まれた天性のものなのだろうか。トヨタやソニーなど大企業の成功者の話を出してしまうと、なおさらそう思えるかもしれない。

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