COLUMN ビジネスシンカー

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2020.07

人間は実はいつだって不合理に行動する!?
知ってると知らないでは大違い。
行動経済学のキホン

企業の成長は
サンクコストを
どうみるかで変わる

また保有効果は、事業撤退のタイミングを鈍らせる場合が多い。よく言われる「サンクコスト」の呪縛だ。

かつて今のJRが国鉄から民営化されるにあたり、建設中の路線が各地で中断することになった。完成を待ち望んでいた地元の自治体は猛反発をした。

「これまでどれだけのお金と時間、労力を使ってきたのだ!」と。

しかし、そういった路線は、仮に無事完成したとしても早晩、廃線になることは目に見えていた。乗降客が増えず赤字が続くことが分かっていたからだ。その時に民営化推進側の人たちが言ったことが、「サンクコストにとらわれるな」という言葉だった。サンクコストとは埋もれたコストの意で、事業などが中断した時にそこまで費やしたコストを指す。

それはまさにIKEAの保有効果と同じ理屈で、当事者にとって、かけた時間とお金と労力は、他者の評価以上に高くなる。仮に10年2,000億円のお金をかけてきても、20年3兆円かけていたとしても、完成して毎年100万円の事業赤字が出るのであれば、永遠に元はとれない。だからかけてきた年月やお金にこだわらず、見込みがないと思った時に中止したほうが、残った時間と資金と労力を未来のために振り分けることができる。しかし企業や公共事業では、このサンクコストにとらわれがちで事業中止を果断するのは、かなり難しいのも事実だ。

株で大損をしてしまうのもこのサンクコストを評価するからだ。明らかに株価が落ちているのに、「もしかしたら」の可能性にかけてズルズルと持ち続け、手放せずに塩漬けにしてしまったりする。

こうした「大損」を避けるには、下がった場合の売却基準を設けておくことだが、それでも一旦保有した株を売却するには勇気が要るもの。

ちなみにサンクコストの問題は、別名「コンコルド問題」とも言われている。

コンコルドはフランスとイギリスが開発した超音速旅客機で、大西洋を約3時間で結んでいたが、燃費や環境問題(とくに騒音)、高いメンテナンス費用と時間などから利益が上がらず、また墜落事故も重なって、たった20機で生産が中止となった。その速さと独特の三角翼を持つ美しさから、今でも根強いファンがいるが、以後、旅客機で超音速機を開発就航させている国はない。

もちろん公共事業の場合、経済原理だけで評価するものではない。実際東日本大震災の時に被災地までにガソリンや灯油などの必要物資を届けることができたのは、赤字路線が残っていたからだ。JRは震災後、その普段使用しない鉄道路線をつなぎながら物資を運び、人々の生活を守った事実がある。公共性の高いインフラは、いざという時のためにみんなが負担して守っていくべきものだとも思う。

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