COLUMN ビジネスシンカー

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2020.07

人間は実はいつだって不合理に行動する!?
知ってると知らないでは大違い。
行動経済学のキホン

行動経済学の
セオリーが満載、
「ディアゴスティーニ」の
ビシネス

行動経済学のセオリーを存分に発揮しているメディアがある。

ディアゴスティーニが発行する雑誌だ。ディアゴスティーニの雑誌はパートワークと呼ばれ、数冊から数十冊で1つの本や完成物となる。

ディアゴスティーニのパートワークは、完成まで何冊も購入し、何ヵ月も待たないといけない。しかも、途中で飽きてしまうことも多々ある。欲しいものがあればネット通販から完成品などを入手できる時代であるにもかかわらず、新シリーズが出ると買いたがるのはなぜか?

それは行動経済学の理論が巧みに活用されているからだ。

その1つは「単純接触効果」というもの。ディアゴスティーニは創刊号のCMを何度も流すが、それほど関心がなくても人は同じものを見ていると、つい興味が湧いてしまう。これは販売や営業、恋愛にも通じる話で、特別な感情を持っていなくても、人は接触回数の多い人に親しみを感じるという法則にも通じる。

2つ目は「価格のアンカー効果(アンカリング)」だ。

同社のシリーズは、たとえば通常価格1,850円を初回だけ950円というように、必ず価格を割り引いて出している。これはアンカー効果と呼ばれるもので、人間は最初に見た数字が基準(アンカー)となり、そこからの差で高い、お得という判断をしてしまう傾向のこと。これは高額商品を売る時によく使われる手でもある。最初に高めの価格を設定しておき、「今だけ」と安いキャンペーン価格を出して、お得感を出すのだ。また従来の高額商品の上にさらに高額のカテゴリをつくることで、従来の商品をお値打ち品に見せることもできる。

3つ目は「収集欲の強い男性をターゲット」にしていることだ。一般的に女性より男性のほうが収集欲が強い傾向がある。そのため企画も男性が興味を持ちやすいものとなっている。そう言えばテーマもオートバイや戦艦、飛行機、城、ヒーロー物、映画などが多く、言われてみれば、納得がいく。

4つ目は「保有効果」。これは後に紹介するIKEAのビジネスにも通じる。人は手間暇かければかけるほどそれに愛着が湧き、途中で止められなくなるからだ。

5つ目は「希少性の原理」。創刊号は書店にたくさん並んでいるが、回を重ねるごとにその量は減っていく。すると「そのうち買えなくなるかもしれない」という心理が働き、今のうちに買っておこうと思ってしまうのだ。

6つ目は「完成欲」。千里の道も一歩からではないが、到底たどりつかないと思っても、ゴールがわかり、そのプロセスがわかれ、頑張ることができる。とくにシリーズの終わりになって、完成品の姿が明確に分かってくると俄然完成させたくなるものだ。完成した姿を見たいという願望が大きくなるのだ。長い距離を走ってきたランナーがゴールのテープを見た時に勇気が湧くのと同じだ。

7つ目は「現状維持バイアス」だ。人間は未知のものや大きな変化を避ける傾向がある。ディアゴスティーニは申込みはネットでできるが、解約は電話のみとなっている。電話一本で解約できるのなら、簡単だと思いがちだが、意外とその一本を面倒だと感じるものなのだ。保険などもそうだが、こうしたシリーズものは一度契約するとなかなか解約しにくくなる。それは現状維持バイアスがかかっているからだ。

さらに経営的な視点からしても、ディアゴスティーニのような分冊配本は購読者が事前に分かるので、無駄な在庫を持たなくて済み、コストパフォーマンスの高いビジネスモデルとなるのだ。

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