COLUMN ビジネスシンカー

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2020.11

外国人が来ない今だからこそ鍛える
日本のビジネスマンの教養!
押さえておきたい
日本庭園のキホン

役木の王様「松」

日本庭園を構成するもう1つの大きな要素は植栽(木)だ。石組の亀や鶴と同様に、縁起を担ぐものが主体で、これには盆栽などに使われる松や杉、檜、楠などの常緑樹が用いられてきた。これらの木は寿命も長く、古代より神が舞い降りる「依代(よりしろ)」として信仰の対象となるものも多く見られていった。

平安時代後期の「作庭記」には、東西南北のそれぞれに青龍、白虎、朱雀、玄武の神がおり、その四神相応(ししんそうおう)に従い、どの方向から水を引き、池を置き、山が見えるように作庭すべしと書かれている。現実には必ずしもそのような条件の土地が見つかるとは限らない。そこでそのような場合に対応した植栽方法が書かれている。

たとえば東に川がなければ柳(やなぎ)の木を9本植える。西に大通りがなければ木大角豆(きささげ)を7本、南に池がなければ桂(かつら)を9本、北に山がなければ、楡(にれ)を3本植えるなど、樹木の種類と本数が指定されているのだ。さらにそれ以外の樹木に関しても、西には紅葉を植えると良い、東に花木を植えると良い、など細かく指示されている。

庭園において、役割をもった樹木を「役木(やくぼく)」といい、江戸時代に書かれた『築山庭造傅』には、この役木の役割について細かく書かれており、今日の作庭の基本となっている。役木には次のようなものがある。

●正真木(しょうしんぼく)...庭の中の主木で、景観の中心となる樹木。松、黐(もちのき)、槇(まき)などが代表

●景養木(けいようぼく)...正真木と対比的に扱い、正真木を補完する樹木。正真木が松などの針葉樹であれば、景養木には楓(かえで)などの広葉樹を使う。逆に正真木が広葉樹である場合は、針葉樹を用いる

●寂然木(じゃくねんぼく)...南庭の東側に植える木で、常緑樹を用いる。枝葉の間から朝の光が溢れ輝くのが望ましい

●夕陽木(せきようぼく)...寂然木とは逆に南庭の西側に植え、西日が葉を美しく透かすような、楓など紅葉する木がのぞましい

●庵添えの木(いおりぞえのき)...茶庭において茶室の軒や腰掛け、四阿(あずまや)などの近くに植えて風情を醸し出す木

●飛泉障りの木(ひせんざわりのき)...滝の手前に添えて、滝口をあらわに見せないようにする木で、奥山の風情を醸し出す

●見越しの松(みこしのまつ)...庭の背景を構成し、前面の景観を引き立てる

役木はそれぞれ役割にふさわしい樹木が植えられているが、古くより主役を務めてきたのがやはり松だ。池泉に浮かぶ蓬莱島や鶴島、亀島などに植えられているのも松がほとんどで、これは縁起だけでなく、神仙思想において松が仙樹として決められてきたからでもある。

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