COLUMN ビジネスシンカー

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2021.02

サスティナブルな社会と会社の基軸
ESG、SDGsに取り組む前に知っておきたい
みんなの幸福学

自分にとっての
根源的なワクワク感を対話から探る

たとえばやってみよう因子を発揮させるには、仕事や役割にやりがい、ワクワク感をもたせることだ。だが会社の仕事がすべてワクワクするものだったり、やりがいのあるものとは限らない。誰でもできそうな単純な作業を延々と続けるようなことであれば、モチベーションの維持は難しいし、かと言って能力以上の仕事はプレッシャーになるだけだ。

能力に応じた割り振りが大切であることはいうまでもないが、その判断、塩梅をうまく行うのは、まさに日頃の上司との関係がものをいう。上司がしっかり愛情をもって部下を観ているかにかかってくる。

基本的にどんな組織にも無駄な仕事はない。些細なこと、一見つまらなそうな仕事に見えても、必ず意義や役割がある。そこを見出ししっかり説明することも重要だ。

1台の車にはおよそ3万点の部品がある。そこでは小さなネジ1つでも不具合があれば、事故や怪我につながる。すべてのピースがそのパフォーマンスをしっかり発揮してこそ、部品の価値の総和の何十倍、何百倍の価値をもつ自動車という製品を生み出す。その意義をしっかり理解して取り組むことができれば、より幸福度が上がっていくはずだ。

こんな話をするとイソップの「3人のれんが職人」の話を思い出した人もいるだろう。

せっかくなのであらすじをかいつまんで話しておこう。

中世のヨーロッパの街に差し掛かった旅人が、街角で汗をかきながらレンガを積んでいるある職人に出会う。旅人はその職人に尋ねる。「ここで何をしているのですか」

職人は答える。「なに、見りゃわかるだろう。親方に命令でレンガを積んでいるんだよ。暑い時も寒い時も、風が強い時も、日がなこうやった仕事をしなきゃならない。もう懲り懲りだぜ」

旅人はその職人に慰めの言葉を言って別れた、しばらく行くと別のレンガ職人に出会う。旅人はまた訊ねた。

2人目の職人は答える。「見りゃわかるだろう。レンガを積んで家をつくってるんだ。大変だが、これで家族が養える。ほかの仕事に比べたらいい仕事だと思うよ」

旅人は励ましの言葉を残して、職人と別れた。またしばらくすると別の職人がいた。

「ここで何をしているのですか」

職人はいきいきとした声で答える。

「私かい。見りゃわかるだろう。ここで街をつくってるんだ。こんなやりがいのある仕事に就けて、幸せ者だよ」

数年後旅人はまた同じ街に戻ってきた。旅人は気になってかつてのレンガ職人に会いに向かった。

1人目の職人は、もういなかった。その職人を知る別の職人が教えてくれた。

「あいつは、文句ばかりで、しばらくしたらいなくなって、それっきりさ」

2人目の職人は、現場で職人に指示をしていた。親方として職人を抱えるまでになっていた。

3人目の職人に会いにいったが、もう現場にはいなかった。その職人を知る別の職人が教えてくれた。「彼かい? 彼はいまこの街の市長をやっているよ。みんなの話を熱心に聞いて実行してくれるいい市長だよ」

極めて寓意的な話だが、同じ仕事でも向き合い方で幸福感が違ってくることは、十分理解できるだろう。

ただ前野教授が問題視するのは、多くの人は自分がそもそもどういうことにワクワクするか、やりがいを感じるのかを自覚していないことだ。ワクワクややりがいはその時、その瞬間に無自覚に訪れる。

そこで前野教授が勧めるのが、対話を通じたやりがいの「根源」を探ること。

自分のやりがいを見いだせない社員に、次のような問いを問いかけてみるのだ。

すぐに回答が出てこないかもしれない。そういった場合は時間をかけ、場合によっては1週間後に再度質問してもいいだろう。

何度も自分に問いかけているうちに、"やらされている" と思っている仕事が実は自分の性分に合っていたり、楽しみを確認できたりすることも出てくる。

こうした話は社員同士、上司と部下ではなかなか話しにくいかもしれない。そういった時は、第三者をインタビュアーに立てることが有効だ。直接利害関係がないコンサルタントや記者などを立て、質問することで本人が自覚してなかった思考や趣向が引き出されることも多い。

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