COLUMN ビジネスシンカー

  • SHARE
  • LINE
2021.09

混迷を深めるVUCAの時代だからこそ。 知っておきたい
「大人の義賊史」

「天使」と名付けられたオーノディ・アンドラーシュ

ハンガリーは義賊大国と呼ばれるだけあって、歴史に残るベチャールがたくさんいた。

最初に全国的に名を上げたのが「アンジャル・バンティ」(1760〜1806年)である。本名をオーノディ・アンドラーシュといい、ハンガリー北部の下級貴族の出で、中級貴族の所領で自ら農業に従事していた。

1780年代頃から、農民の格好をして盗品を扱う商人や逃亡兵士などの仲間と一緒になって生活していたが、ある日自分の馬を連れて歩いているにも拘わらず、証明書がなくて怪しまれて捕まってしまう。バンディは8年の刑を受けたが、恩赦によって2年に軽減され釈放されると、すぐに彼はベチャールの仲間になる。

当初はベチャールが盗んできた馬を売りさばく役目を担っていたが、やがてバンティ自身も馬泥棒を働くようになる。次第に頭角を現し、貴族の所領から馬や牛、現金を強奪、1790年代には、ハンガリー大平原の「馬に乗ったベチャール」として知られるようになった。しかし1799年に現金を盗んだ罪で捕まり、2年の禁固刑を受ける。服役後はまたベチャールに戻り、1805年に捕まり投獄されるが、釈放されて翌年死亡している。

彼がいまなおハンガリー国民の間に語られているのは、その暴虐ぶりの反面、大変なイケメンであったことだ。そのイケメンぶりに当時の女性は「アンジャル(天使)」と名付けたという。貴族出身でイケメンで、全国に知られた馬に乗った大泥棒という設定は、まるで少女漫画で描かれる世界だが、実際世の女性のハートだけでなく庶民の心をも鷲掴みしたようで、バンティについてはたくさんの民謡が残されている。

  • LINE