【対談企画】かずえちゃん×Nstyle運営部門長「誰もが自分らしく活躍できる企業とは」
LGBTQに関する情報を発信する、福井県出身のYouTuberかずえちゃんと、“自分がいちばん居心地のいい自分”でいられるサポートをする、バストフラットインナーブランドNstyle(エヌスタイル)の運営部門長との対談が実現。かずえちゃんならではの視点で、エル・ローズの自分らしい働き方を紐解いてくれました。
「誰もが自分らしく活躍できる企業とは?」
■ かずえちゃん(写真右) / LGBTQに関する情報を発信するYouTuber
1982年、福井県生まれ。
会社員を経て、30歳でカナダに留学。帰国後の2016年からLGBTQをテーマにYouTubeをスタート。
企業や⾃治体、教育機関等での講演や研修などに⼒を注ぐ。いつかカミングアウトという⾔葉がなくなる社会を⽬指し⽇々活動を⾏っている。現在は⽇本と台湾の⼆拠点⽣活を送っている。
■ 田中 信吾(写真左) / 株式会社エル・ローズ 取締役 第一営業部 部長
1993年、エル・ローズ入社。
下着製造の⽣産管理を経験し、カタログ通販向け卸事業の⽴ち上げチームの⼀員として営業を担当。その後、OEM製造の営業や卸専売のPB商品開発等を経て、現在はBtoB、BtoC両⽅を含むインナーウェア事業全般を統括している。
かずえちゃん:まずは、エル・ローズにご入社された時のことをお伺いしたいと思います。当時の気持ちってなにか覚えていらっしゃいますか?
田中:入社当時は、働くということに関しては、なにか“考える”というよりもがむしゃらだった記憶があります。立ち上がったばかりの⼥性⽤インナーウェアの通販営業チームに入り、すべてが⼀からでした。何事も⾃分でしないといけない、という感じで。その後に補整下着の企画開発やPB 商品の提案と様々な業務を経験したので、今思えば仕事の⼀連の流れを把握する、すごくいい勉強の機会でしたね。
かずえちゃん:補整下着というと、ターゲットは女性がメインだと思いますが、 ご自身が身につけることのない商品を販売するという中で、仕事のやりづらさはありませんでしたか?
田中:実は、そんなことはなくて。あくまでビジネスツールという認識だった、ということもありますが、当時は経営層と商談をする機会がほとんどで、その場には男性が多かったんです。私が話をするお相手も男性でした。今思えば、商品にフォーカスされることが少なかったのかもしれません。
かずえちゃん:“男性”がゆえの仕事の難しさ、みたいなものはあまりなかったんですね。
田中:ありませんでしたね。
今は商談の場に女性も増えました。商品説明では弊社の女性の営業やデザイナーが担当し、私は今まで培ってきた視点でビジネス全体を見ながらの提案を行うなど、それぞれの強みを活かして働いています。
そういった意味では、今も男性だから働きにくい、ということはありません。
かずえちゃん:僕のしていたウエディングプランナーという仕事は、女性が圧倒的に多く、 お客様も“女性”のウエディングプランナーを求めていることが多くて。
担当が“男性”とお伝えすると、「プランナーを変えてほしい」というようなこともありました。
実際に、ドレスフィッティングの⽴ち合いや、直接お客様にふれるメイクなど……“男性のウエディングプランナー”が⼥性と⽐較して、できることに限界があるように感じたことを覚えています。
田中:おそらくですけど、直接お客様とお話するという点と、企業の担当者とお話するという点で違うのかもしれません。 たしかに私自身は商品のフィッティングに入ることもできないのですが……当時はユーザーさんの気持ちが分からなくても、ビジネスとしては成り立つ。そんな部分があったように思います。
逆にいうと最近は、やっぱり男性である自分では分からないところがある、という部分を認識するようになりました。 Nstyle(エヌスタイル)*もそのひとつです。
*Nstyleは、“自分がいちばん居心地のいい自分”でいられるバストフラットインナーブランド
ビジネス上のニーズは理解できていても、 ユーザーさんの気持ちは分からない部分はあって。でも、まずはそのユーザーさんの気持ちが大事なんだなって。その部分はNstyleチームが理解し、いつも熱意をもって新しい企画を私に説明してくれています。
かずえちゃん: Nstyleは、 それまでのいわゆる“補整下着”の概念(キレイにカタチよく見せるようなもの)とは真逆な発想だと感じているのですが、 企画として話があがってきたとき、どう思われましたか?
田中:当時、社内ではSDGsの推進をしようと様々な取り組みが行われていました。その中で「ジェンダー平等」がひとつのキーワードになっていて。
私たちの商品を通じて、「ジェンダー平等」に一歩近づけるような、新しい商品を企画してみるのがいいのではないか、と話にあがっていました。
そのため、今までの商品とは真逆な企画が唐突に出てきたというよりは、 社内的にやってみようかとなった、という方がイメージに近いかもしれません。
新しい企画はどういう切り口でいくのか。ジェンダー平等はセンシティブな問題で、課題は多くありました。
曲折を経て、潜在的なニーズにきちんとお応えできるよう、「バストを目立たせたくない」というお客様の声をもう少し深堀りしよう、今までのエル・ローズが培ってきた技術やアイデアを転用していこう、と企画の話が進んでいきました。
そして、エル・ローズならではの「“⼥性のお悩みを解決する”潜在的なニーズを拾いあげられるブランドを進めるべき」と、 Nstyleが2021年にローンチされました。
ここまでブランドが認知していただけたのは、ブランドディレクターである上山をはじめとした、Nstyleチームのおかげだと思います。
かずえちゃん:2021年というと、僕は“FM福井 SDGsアンバサダー”をしていました。福井を中⼼として、県内外のSDGsについて発⾒・発信をしていたので、 ラジオでぜひNstyleのお話をお聞きしたかったです!
SDGsの推進含めて、タイミングが重なったことは大きいですね。Nstyleもスタートしてもう3年ですね!
田中:一からのチャレンジだったNstyleは、まだまだこれからのブランドです。
「バストをフラットに見せる」と一言で言っても、バストを目立たせたくないため、ファッションを楽しむため、また、身体の性*1と性自認*2の不一致から見せ方を変えたいため、と、目的は多種多様で。Nstyleチームは常にユーザーの皆様とコミュニケーションを取りながら、試行錯誤しているようです。
*1法律上の性、出⽣時に割り当てられた性別
*2⾃⾝の性をどのように認識しているかという概念
かずえちゃん:Nstyleのレビュー、僕も読ませていただきました。僕は同性愛者としての生きづらさはあっても、 自分の身体への嫌悪感はありません。例えば、男性のトイレに⼊ることや⼩学校⼊学のとき両親が⿊いランドセルを買ってくれたこと、性別欄の「男」に丸をつけることなど、⾃分の性別に違和感をもったことはないんです。LGBTQ を⼀括りにして語られることが多いですが、僕はゲイの当事者であるので、ゲイ以外のセクシュアリティについてはわからないことも多いです。
NstyleのユーザーさんがNstyleと出会う前に経験したというような、さらしを巻いて身体をつぶすとか、 身体の線を出したくないとか、自分には想像しかできない部分で。
みんながみんな、同じ悩みを抱えているわけではないですよね。
田中:そうですね。Nstyleに届くお客様の声を聞いていると、潜在的な悩みは一括りにできず、人それぞれだと改めて感じる部分が多いです。
かずえちゃん:Nstyleのレビューの中には、おそらくトランス男性*3の身体を見せたくない、強調したくない、といったようなレビューもありました。Nstyleに出会ったことで、胸を張って生きられるようになった、と。
*3女性の身体で生まれ、男性として生きることを望む人を指す
下着は毎日身につけるものだからこそ、Nstyleは当事者にとって「これでいいんだ」と勇気づけられる、背中を押してくれるブランドなんだと思います。
実際にレビューが届いたときに感じたことをお伺いしてもいいですか?
田中:前向きに生活できるようになった、ということを聞くと、 うれしいというかよかったなって思います。 ああ、ニーズに応えることが出来たんだなって。
モノがあふれるこの時代に、「ストーリーが大事」って話を社内でよくするんです。
Nstyleでは、ただ下着をお届けするだけではなく、「自分だけではないんだ」と思えるようなエピソードをマンガにしてお届けしたり、座談会の開催を行なったりしています。
ありがたいことに反響が大きいようで、改めて、「やっぱりストーリーが大事なんだ」と思えました。
「こんなレビューがはいりました!」と報告を受ける度に、報告する社員の表情もうれしそうで。Nstyleをはじめてよかったなって思います。
これからも、Nstyleというブランドを知っていただくことで、日常がすこし前向きになる。そんな方が一人でも増えるとうれしいです。
かずえちゃん:前向きに生活できると思える選択肢をNstyleがつくった、ということがすばらしいなって思います。
田中:先ほどブランドを立ち上げるときの話がありましたが、お客様に近い目線でものづくりができているのは、社員からの「こうしたい」という想いがあるからなんです。だからこそ、同じ目線で必要だと思える選択肢(ブランド)が生まれていく。
これからも自社ブランドの販売に、力をいれていきたいと思っています。
時代にあった発想で、提案できる社員に任せるべきところを任せながら、最後に少しだけ手綱をにぎって。
かずえちゃん:そう思うと、ご入社されたときと比べると、個の活躍や、働きやすさという面でも変わってきていますか?
田中:変わってきていると思います。
私の入社当時と比べると、「こうやってみたいんです」という声が増えたように感じますね。その中で、様々な考えを持った人たちが活躍できる環境を整えていくことが、私の責任かなと思います。
今までを築き上げてきたものに敬意を払いながら、時代にあわせた柔軟性をもって、変えるべき部分を変えていく。会社として“持続可能か”を意識して、これからも変わっていかないと、と思っています。
かずえちゃん:僕が他の会社で研修を行った際に出会った女性のお話を聞くと、「自分が入社したとき(30年ほど前)は、結婚したら仕事をやめるって人が多かったように思います」と。
「それから社会が変わって、女性でも仕事を続けることが当たり前になって。自分が変わったというよりも、社会が変わって、その流れにのったという感じ。当時、女性がお茶汲みをしていても、それを不平等だとは思わなかった」とおっしゃっていました。
でも今振り返ると、「なんで女性だったんだろう」って。
重要なのは、 属性に関係なく、だれもが平等に「場」が与えられることですよね。
田中:そう思います。
従来の「当たり前」に捉われて、気づけていないことってありますよね。
かずえちゃん:当時は“女性”っていうだけで、その「場」がなかったと思うんです。
誰がいいとか悪いとかじゃなくて、みんなが「そういうもの」として生きてきた時代だったんだろうなって。でも、そうではなくて、「場」が与えられることがすごく重要だなと思って。
これからもそうして「当たり前」が変わっていくんだろうなって思います。
今日お話を聞いて、よりそう思いました。
田中:エル・ローズは、女性の活躍あってこそ、成長してきた会社だと思います。
だからこそ、これからも変わっていかないといけない。
属性に関係なく「活躍したい」と、そう思えるような体制をつくっていかないといけないなって。
かずえちゃん:今回の軸となっているテーマ「自分らしく働ける職場」って様々なところで耳にする言葉ですが、推進していくのは簡単なことではないと思うんです。
当たり前と思ってきた慣習を、今は違うかもしれない、と認める難しさもあります。すぐ変えられるかっていうとそうではなくて、 でも変えていかないとって。
そんな中で、「誰もが活躍できる企業」をつくっていくために大切にしていることはありますか?
田中:「所属している社員が目的や目標を共有すること」だと考えています。
どの部門であろうと、異なる業務を担当していようと、同じビジョンに向かって取り組むことで、自分とは異なる意見も受け入れて、プラスに転換しながら進んでいけると思うんです。
想いを共有することが大事だと思います。
かずえちゃん:物事を体現して変えていくって簡単なことではないですよね。
それでも、一人ひとりのちょっとした意識で、10年、20年たったとき、 あんな時代もあったよねってなればいいなって。一歩ずつでも、想いを共有しながら進んでいくことって大切だなって思います。
最後に、エル・ローズで働く皆さんにメッセージをお願いします!
田中:任すべき部分は任せたいと思っているので、いろんな意見を言ってほしいですね。意見を言い合えない組織に成長はありません。アクションを起こして失敗しても、 また新しいことにチャレンジすればいい 。
“自分らしく働き活躍できる場”にしていくっていうのは 我々の仕事だと思います。これからも多様な人材が活躍できる環境づくりに向けて、取り組みを推進していきたいと思います。
今回のかずえちゃんとの対談は、働きやすさや自分たちのものづくりに対して改めて考える機会となりました。
ありがとうございました。
かずえちゃん:ゲイであることを隠していた当時、「彼⼥はいないの?」「男の⼈は結婚して(家庭をもって)⼀⼈前」「ホモなの?」「おかまっぽい」…そう⾔われても、⾃分がゲイだから悪いんだ、そう⾔われても我慢しないといけないんだ、⾃分も「普通」にならないと…ずっとそう思って⽣きてきました。でも、いろんな⼈に出会ったり、同性婚ができるカナダで暮らすなかで、ゲイであることが悪いんじゃないって思いました。ゲイであることで(例えば⼥性、外国⼈、障害者など)その属性であることで、平等に扱ってもらえない、そして差別がまかり通ってしまう社会側の問題なんだと強く感じるようになりました。そして、その社会が変わらないと、本当の意味での解決にならないと思います。
ですがこうして、エル・ローズさんのように変わり続けようとしている企業があることが知れて、僕も勇気づけられました。地元・福井の企業とこのようなご縁があって、とてもうれしいです。
本⽇はありがとうございました。