COLUMN ビジネスシンカー

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2018.06

1000年を見据える「千年持続学」から学ぶ 21世紀型資本主義・経営

新しい価値創造の哲学「バイオリージョン」

 このように人間が生きていく上では環境にある資源を消費することは避けられない。それゆえ、持続可能な社会、システムを見出していくには、環境負荷を低減する、資源枯渇に対応するといった課題対応型のソリューションでは十全ではない。環境対応をコストではなく、価値創造の大きなエンジンとして捉えていく必要がある。

 その哲学として注目されているのが、「バイオリージョン」という考え方だ。バイオリージョンとは生命地域主義と呼ばれるもので、端的に言えば、地域に根差したエコロジーとエコノミーの両立概念である。その根源には地域の再定住「リインハビテーション」という視点がある。

 つまり地域に住んでいる住民が住んでいる地域に根付き、その上でその地域と改めて一体化することである。そのためには地域が持つ、気候、地形、水系、土壌、微生物、動植物、資源などを最大限に有効活用していくことが求められる。そして人間も有用な地域資源の一部として捉えなおし、地域に蓄積された歴史、文化、風土、技術、人材といった社会資本を積極的に活用していく。

 今ある環境や人的資源や文化や社会を生み出してきた背景を一度客観視化して、見つめ直し、その良さを引き出していくのだ。その場合、これまでのような価値観からいかに抜け出せるかがポイントになる。

独自の木質ペレットストーブを生み出し1000台以上も売った岩手県

 すでにバイオリージョンという視点に立ったプロジェクトは内外で展開されている。

 平昌冬季オリンピックのカーリングチームのふるさと北海道北見市。市内にある「オホーツクビール」は「市民による市民のためのビールづくり」を掲げて、販路を北見市だけに限定。地元農家の大麦を使い、製造過程からできるビール糟を地元の酪農家に卸している。そこでできた肉からウインナーやソーセージをつくり、その糞は提携している農家にわたされ、原料となる大麦を育てている。

オホーツクビー ル
オホーツクビールHP
友の会を組織し、品評会に招くなど、組織運営に大きな影響を与えている。

 一方、岩手県では京都議定書が採択された翌年に国のCO2削減目標を上回る8%を掲げ、環境首都に取り組む。太陽光や風力発電、バイオマスなどのさまざまな再生可能エネルギー産業を育成している。とりわけ優れているのは、木質バイオマス産業。県と民間、大学、研究機関からなる木質バイオマス研究会を立ちあげ、官民でその促進を図った。

いわて型ペレットス トーブ岩手県が独自に開発した「いわて型ペレットストーブ」。FF式灯油ストーブを超えるパフォーマンスがあり、自動消火、温度調節など先端技術ももりこんでいる。

 灯油のFF式ストーブよりコストパフォーマンスに優れた岩手型といわれる木質ペレットストーブを独自に開発し、県内1000戸以上に販売しているほか、全国にも広がっている。また水分を含んだ木材チップも燃やせる岩手型木材チップボイラーも開発し、これも県内外の大型事業施設で採用されている。岩手ではストーブやボイラー燃料となる木質チップやペレットのニーズの高まりにより、新たな流通産業や雇用が生まれ、疲弊していた林業にも活気が出てきた。

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