COLUMN ビジネスシンカー

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2018.07

“きっちり”し過ぎて損をしていないか? ビジネスは<だらしな系>のほうがうまくいく?

会社はきっちりとした戦略がないほうがうまくいく

 二人の著書にはさらにこんな衝撃的な話も載っている。

 それはビル・スターバックというあるコンサルタントが調査した、戦略プランの話だ。スターバックが世の中の戦略プランに再検討を加えたところ、戦略プランニングの行為そのものがおよそ無駄であることを指摘したのだ。

 現代の企業において戦略の重要性はいまさら語るべくもない。しっかりとした戦略は、企業の未来をより明確に描く。トップから一般社員まで戦略をしっかり共有することで、明確な意思統一が図れ、社員の無駄な動きをなくし、しかるべきベネフィットを手にすることができる。実際に企業において戦略プランを練ることの重要性は幾度となく検証されている。

 だがスターバックが調べた結果、戦略プランニングに力を入れた企業は、それほど力を入れなかった企業に比べ、目に見えた効果を発揮したとは言えないことがわかったのだ。

 従来の調査が戦略プランニングを"効果的だ"と示すのは、その対象が主に幹部役員で、主観的に判断されたためというのがその理由だ。

 スターバックによれば、管理職の地位は肯定的な評価によって上がり、否定的な評価で下がる。そのために肯定的な面が強調されるよう情報が歪曲される。疑問を抱く人がいても、トラブルメーカーとみなされることを恐れ、何も言いだせない。かくして部下からの正しい情報は上がってこなくなるというもの。

 しかも、仮に正しい情報が上がってきたとしても、数ヶ月先の市場を読むことは難しい。くるくる変化する消費者やライバルの動きを的確に予測できないし、常に新しいトレンドが生まれ、政治も変わる、気候変化や天変地異も起こる。

 それは「コインを投げて表裏で決めるようなもの」(スターバック)と言う。だから「過去と現在のあいまいな認識に基づいたプランニングが役立つわけがないのだ」と。

 でもスターバックは、「だからと言ってなんら恥じる必要はないのだ」とも言っている。むしろ長期的な戦略プランにしばられないほうが、ビジネス環境に予期せぬ変化が生じても、臨機応変に素早い対応をとることができるのだと。ゆえにきっちりとした戦略プランにこだわる企業は利益を生まず、むしろ足かせになるのに対し、戦略プランのないだらしな系企業は、ビジネス環境の急変にも対応でき、生き延びやすいと結論付けている。

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