COLUMN ビジネスシンカー

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2018.08

ビッグデータ時代に押さえておきたい 統計データの見方のキホン

弱小プロ野球球団をAクラスに導いたデータ思考法

 セブン-イレブンの鈴木敏文さんのほかにも独特の見方をする経営者はいる。

 リクルートから出向し、盛岡グランドホテルの再生や、万年Bクラスだったプロ野球球団・ダイエーホークス(現在のソフトバンクホークス)をAクラス球団に育て、昨年逝去した高塚猛さんなども、データの捉え方のうまい人だった。

 毀誉褒貶のある人だったが、特にダイエーをAクラス球団に育てた手腕は、見事なものだった。

 球場に足を運ばせ、さらに福岡、九州全土にファンをつくった手法は、野球の本質をビジネスから捉えていたからだ。

 高塚さんは野球で勝つこととは何かを考えた。野球で勝つということは得点を入れる確率を高くすることだ。それは塁に出た選手を返すことにほかならない。

 野球でヒットが出る確率はおよそ3割。3回か4回に1つ。1塁に出たランナーを返すには基本的に2本のヒットが出ないと点にならない。ホームランなら1本で点が入るが、ホームランは狙っても20回に1度程度しか実現できない。すると長打を狙うよりも、ヒットをつないでいくほうが点を返しやすいことがわかる。

 しかし打者の心理として、ランナーが塁にいるとヒットでは点にならないと思い、10回に1、2回は長打を打ちたいという気持ちになる。するとランナーが1塁にいたときの打率は低くなる。当時(1999年)のデータでは、ランナー1塁時の打率はどの球団でも下がっていた。そこで高塚さんは選手の評価にこんな加点をした。

 ランナーが1塁にいるとき、バッターが得点圏に送って、次の打者がヒットを打って返したら、そのバッターと前のバッターにも打点を付けるとしたのだ。もちろん公式に打点は付かない、ダイエーでの業務評価として付けた。

 その結果ランナー1塁時の打率は、チーム打率の2割6分1厘を超える3割1厘まで上がったのだ。

 さらに盗塁を積極的に評価した。盗塁はどのチームでもだいたい7割が成功する。打率に比べて成功率は倍以上。高塚さんはここに目をつけた。ただし盗塁の場合は「成功すると思って走った」結果の7割で、成功するかどうか分からないときに走った場合、成功率は5割程度に落ちるかもしれない。それでもヒットで塁に出る確率より高い。

 事実この盗塁と独自の打点評価で選手の意識と戦略が変わったダイエーは翌年見事優勝したのだった。もちろん監督の采配、コーチ陣、スタッフ、選手の努力、能力もある。だがまったく野球と縁遠い道を歩んできた経営者が、1つの球団を見事に変えたことは、あまり例がない。

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