COLUMN ビジネスシンカー

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2018.08

ビッグデータ時代に押さえておきたい 統計データの見方のキホン

POSシステムのデータは、仮説を検証するためにある

 そもそも鈴木さんは、POSシステムを、単に在庫切れをなくすためや売れ筋商品を知るために使っていない。仮説検証の道具として使っているのだ。

「POSシステムは、基本的に仮説が正しかったかどうかを検証するためのものであって、POSが出した売り上げランキングの結果をもとに発注するのではない」(「鈴木敏文の『統計心理学』」)

 なぜならPOSシステムは「明日の売れ筋」データを教えてくれるわけではないからだ。

 また鈴木さんは、「ABC分析は昨日までのデータであって明日を読むことはできない」とも語っている。

 ABC分析とは、商品管理の代表的手法で、販売に関わっている方なら知っていると思う。

 最も売れている商品群をA、その次の商品群がB、その次がCと、売れ行きに応じてABCとランク付けし、そのランク付けの割合で仕入れすると売上が最も高くなるという考え方だ。だいたいAが売り上げの7割を占め、AとBで9割を占める。残りのCを「死に筋商品」と言ったりもする。

 よってAランクの商品群を重点的に仕入れていけば、当然より高い売り上げが期待できる。しかしABC分析に準じた仕入れでは早晩在庫を抱えることになりかねないと鈴木さんは指摘する。

 話を単純化してみる。仮に商品X、Y、Zがあるとする。Xは80個仕入れて50個が売れ、Yは50個仕入れて40個が、Zは35個仕入れて35 個が売れたとする。この場合、どれを仕入れていけばいいか。

 POSデータではXがトップに来る。しかし実は過去3日で見るとZは1日で35個売れ、Yは2日間で40個売れ、Xは50個売れたが30個が残っていた場合はどうだろう。この場合売り手側からすれば、X が売れ筋となる。だが買い手側からすれば、Zが売れ筋になる。1 日で売れたのは、みんながほしがっていた商品だからで、2日目以降売れなかったのは単に店頭になかったからかもしれない。

 つまり「売れた量の結果データだけを見て、将来を予測してはいけないのです」(「鈴木敏文の『統計心理学』」)

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