COLUMN ビジネスシンカー

2018.09

チャンスを活かす!ピンチを切り抜ける! 大人が知っておきたい「ビジネスの法則」

①「パレートの法則」

「ニッパチの原理」として
日本製品の品質向上に貢献した
2対8の原理

 「パレートの法則」と聞いて、すぐ「アレのことだ」と分かる人は、日頃からビジネス書に親しんでいる人だろう。「2対8の法則」や「20対80の法則」などと呼ばれるものだ。

 パレートの法則とは、19世紀末に活躍したイタリア人経済学者、ヴィルフレド・パレートによって発見された法則。当時パレートが、ヨーロッパ諸国の所得や資産を分析したところ、どの国も上位2割の人々が国民全体の8割の富を専有していたことが判明したのだ。

 パレートがユニークなのは、その法則を自然科学や社会学的な視点でも検証していることだ。庭の「さやえんどう」を観察して、さや全体の8割に身が詰まっているさやえんどうは全体の2割にとどまっていることや、母国イタリアの国土の2割に8割の人が住んでいることなどを発見、2対8の法則性がさまざまな分野で適用できることを発見していったのだ。

 パレートが発見した法則をビジネスの世界で一躍有名にしたのが、アメリカの経営学者ジョゼフ・デュランだ。

 デュランは、経営に科学的な品質管理を導入した人として知られている。彼はパレートの2対8の法則が「発生頻度上位2割のミスが、8割の損害を与えている」という品質管理の法則にも当てはめられることを発見し、これをTQC(総合品質管理)の改善手法として多くの企業に説いて回った。

 日本では1950年代に導入され、「ニッパチの原理」として、当時低品質に悩んでいた日本企業の品質改善に大きく貢献した。つまりデュランは現在の「メイドインジャパン=高品質」の礎、ものづくり日本の基礎を築いたとも言えるのだ。

 デュランが説いた2対8のインパクトは、日本の産業界のみならず、当時の経営学の常識をも変えた。というのも日本企業は、デュランの「2対8」の品質管理によって、品質だけでなく生産性も上げたからだ。

 それまでの経済学では生産性を高めるには、1)資本の投下、2)労働の投下、3)技術発展のいずれかが必要とされていた。つまりお金をかけるか、人を増やすか、技術革新を起こすか(新技術を導入するか)のいずれかがないと生産性は上がらないというものだった。

 しかし日本では、1960年代に入ると設備投資が大きく伸びていないにもかかわらず労働生産性が伸びていったのだ。これは労働生産性向上のかなりの部分を品質管理が担っていたということができ、この成果によって品質管理の重要性が世界中に広がったのだ。

原因を2割解決すると8割の問題が解決する

 パレートの原則は、その後もさまざまな分野で応用されている。

 代表的なのは「売れ筋の商品の2割が、売上全体の8割を占める」、あるいは「売上の8割は全顧客の2割が占めている」という販売の法則だ。これはおよそBtoCのどの業界にもほぼほぼ当てはまる法則だ。もし売上をしっかり確保したいなら、2割の顧客に受ける企画やキャンペーンを展開したほうが効果的だということだ。いまはターゲット分析とそこへのアプローチ法がいくつもあるが、大きくはずれないという点ではもっとも有効な法則と言える。

 2対8の法則は、問題が起こった際の原因解明や効果的な改善策の原則としても使われている。

 たとえば、「苦情の8割は2割の顧客から出ている」といった法則や「企業で起こる問題の8割は2割の従業員が起こす」、「故障の8割は部品の2割に原因がある」という法則などだ。

 これらの法則は、問題の要因となる2割の対策をしっかり行えば、問題の大半となる8割が改善できることを意味している。さらに「2対8の法則」は次のような場でも適用、応用されている。

●日常着ている服の8割は、お気に入りの2割で構成されている

●仕事で効果的な時間の使い方は、自分が最も得意とする2割の仕事に集中し、ほかの8割の仕事を他人に任せる

●自分の役に立つ人脈は、全体の2割にすぎない

●ながら勉強で学ぶ語学で耳に残っていくのは全体の2割

●売れる営業パーソンは商談の時間の8割を聞くことに専念し、2割で質問する

 さらにはこんな2対8もある。

●ビールと泡の割合は、8対2が一番美味しい

●蕎麦は蕎麦粉が8割、小麦粉が2割の二八蕎麦が美味しい

 このあたりは人によっては異論が出るところだが、ここまで来ると2:8の比率が森羅万象に通じる科学の法則にも思えてくる。

 もちろん2対8の法則は、必ずしもその割合で現れるというものではない。1.5割対8.5割であったり、3対7であるかもしれない。

 実際パレートが19世紀末にヨーロッパ諸国の富の偏在に気づいた時には2対8だったが、21世紀を迎えた今、その偏在はより偏っていることは周知の通りだ。稀代の天才経済学者も現在のような富の偏在を想起することはできなかった。代わってトマ・ピケティのような学者が活躍するわけだが...。

 ただビジネスや社会において「少数の原因が多数の結果を起こす」、あるいは「たくさんの事象も元は少数の要素から生まれている」ということは、かなりの確度で言える。