COLUMN ビジネスシンカー

2018.12

働き方改革の先人たち 「実践・逆張り・非常識」経営 あの会社はなぜ業績を上げたのか

全員参加義務の社員旅行に居残りを志願した営業マン。
社長が取った度肝を抜く行動とは…

 ただ、それも社員満足度があっての話。未来工業は数年おきにユニークな社員旅行をすることでも知られている。行き先を告げずに「真夏と真冬の両方の支度をしてこい」と空港集合させ、そこで初めて行き先を明かすというテレビのバラエティ番組のようなことをしたり、ある時は全員エジプト旅行に行き、そこで出されたクイズに全問正解したら、1年間休暇を貰えるという懸賞旅行を計画したこともある。

 

 しかも全員参加が義務。同社は大手ほどではないとは言え社員は800人もいる。それを一人残さず海外に連れて行くというのも凄いものだが、そこで気になるのが顧客との関係だ。だいたい社員旅行は年末年始の休みにからめて企画されるが、実施するのがクリスマス前から。当然まだお客は休暇に入っていない。ある時顧客思いの熱心な営業マンが、「お客様から注文が入ったときに対応できないので残る」と言い出した。

 すると山田さんは、「例外は認めない」と言い放つ。「社員旅行は前からお客様にも伝えてあるから、必要だったら営業日内に発注してくるはずだ」と言うのだ。営業マンは、「そうだったとしても、年末年始にいろいろと入用になることがあるはず」言い返した。「それなら」、と山田さんはある手を打ったのだ。

 どうしたかというと、全国の拠点にある倉庫の鍵を顧客分つくり、営業マンを通じて顧客に渡したのだ。「必要なものが出たら、この鍵を使って倉庫に入って持って行ってください。持っていったものは事後報告で構いませんから」と。つくったスペアの鍵は3000個あったという。

「大丈夫だろうか?」という営業マンの心配をよそに、山田さんはこう言う。「日本人は、もし倉庫に入って何か無くなったらとか、トラブルを心配するから先に発注するか、年明けまで待つよ」と。

 結局、社員旅行の間にその鍵を使って倉庫に入った顧客企業は2、3社だけで、あとは前倒しで発注してきたとのこと。山田さんの読みは当たった。

 同社では創立45周年の時もマレーシアに社員旅行が予定されていたが、この時は、東日本大震災が起こったため、その旅行を取りやめ、1億円を義援金として寄付したそうだ。