COLUMN ビジネスシンカー

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2018.12

働き方改革の先人たち 「実践・逆張り・非常識」経営 あの会社はなぜ業績を上げたのか

ギネス認定、
100 万分の1グラムの微小ギアをつくって浮上した部品メーカー

 愛知県豊橋市にある、「樹研工業」も世間の常識から外れたユニークな経営手法で業績を伸ばしてきた。

 同社はギネス認定の世界一軽いプラスチックギアをつくったことで知られている。その重さはわずか100万分の1グラム。大きさは肉眼では確認できないほど。1個が粉のようなサイズであることから名付けたのが「パウダーギア」。

 一時、マイクロマシンというものがもてはやされた。小さなマシンが人間の体内に入って、従来見えないところや悪い箇所を撮影したり、修復作業をさせたりする極小の医療機械である。樹研工業がこのパウダーギアに取り組んだのは、そういったマイクロマシンに使うギアのニーズを盛り込んだからだと思われたが、創業者で会長の松浦元男さんの狙いはそこにはなかった。

 樹研工業はその社名からわかるように、樹脂、プラスチック加工品を生産しているが、もともと小さい部品をつくることが得意な会社だった。

 しかし得意先の家電メーカーがどんどん海外に生産設備を移転し、仕事が先細りしていった。そこで新しい得意先を探そうということになった。新規開拓のための営業費用をより効果的に使えないかという意見が出て、ならば広告を打とうという話になった。しかし社員から「単に広告を打つより、もっと我々技術を知ってもらうことにしよう」と、取り組んだのがこの小さなキアづくりだった。

 わざわざ高額の加工機を購入し、時間と手間をかけて1万分の1グラムまで小さくしたギアを完成させた。すると狙い通り日本中のメディアが取り上げた。

 しかしそのレベルの技術は国内ではまだ数社あった。そこでさらに10万分の1グラムのギアをつくったのだが、今度は思ったほどメディアが反応してくれなかった。

 松浦さんは「ああ、世間はもう関心がないのだな」と思う一方、「まだ極限まで行っていないから関心をもってくれないのだ」と思ったそう。

 そこで打ち出したのが、100万分の5グラムのギア。いまの会社の技術力を考えたら、ここが限界だと見切ったのだった。しかしこれには社員が猛反発した。「もしここでどこかの会社が100万分の1グラムを出したらどうするんですか?」と。

 松浦さんは、「そこまでいうなら」とやらせたら、できてしまった。するとテレビや雑誌などがあちこち取り上げてくれたという。1万分の1グラム以上に大きな反響となった。大きく違ったのは、これまで付き合いのなかった自動車部品メーカーや携帯電話やデジカメから引き合いが来たことだった。

 国内だけでなく、イタリアのフェラーリ社や腕時計メーカーのスイスのスウォッチ社など世界の名だたる企業からオファーが舞い込んだのだ。

 もちろん100万分の1グラムのギアは見本市以外、いまだ使われたことはない。つまり壮大な「売名行為」のために億単位の投資をして究極のモノづくりをしたのだ。

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