COLUMN ビジネスシンカー

2019.01

AI、VR … 先端テクノロジ全盛時代だからこそ 人を伸ばす丁稚奉公・徒弟制度が活きる!

「職人は教え下手の育て上手」

 なぜ日本の徒弟制度が廃れていき、欧米型の徒弟制度は残っているのだろうか。

 伝統工芸の世界やモノづくり職人の現場のいま最大の悩みは、後継者不足であることは周知の通り。その一因として、若年労働者の不足や、中小のモノづくり現場などの労働環境が洗練されていないことなどが、若い人にとって魅力的に映らないことが挙げられているが、いまの師匠となる人たちが従来の徒弟制度のなかで学んできたことがあり、「見て覚える」「盗んで覚える」ということ以外に、教え方がわからないということも大きいようだ。

 自ら旋盤工として50年のキャリアを持ち、小説家として多数の作品を残している小関智弘さんは、このあたりについて「職人は教え下手の育て上手」(『職人学』)という言い回しで表現している。

 実際にある職人は回想で、「仕事を覚えるのはきつかったですよ。口より先に手が飛んで来るわけですから。(中略)聞く側の熱意の問題でね。こいつは本気だとわかれば、よく教えてくれたものね。ただ教えてもらって楽をしようというヤツには、見て覚えろ、盗んで覚えろって、なかなか教えてくれなかった。職人ていうのはすごい教育者だって思います」(同書)と語っている。

 職人は人をちゃんと育てたいのだ、本気の若者に。

 実際大田区などの町工場では、日本のデュアルシステムによって地元の高校生を受け入れ出してから、先輩職人自身が教え方のマニュアルをつくったり、職場をリフォームしたり、福利厚生制度などを考えたりする例が出てきている。師匠は「若い見習いが貪欲に吸収する姿に打たれた」といい、ベテラン職人は「昔を思い出した」と嬉しがる。