COLUMN ビジネスシンカー

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2019.01

AI、VR … 先端テクノロジ全盛時代だからこそ 人を伸ばす丁稚奉公・徒弟制度が活きる!

丁稚時代は女性も坊主で修行。厳しい丁稚修行でも全国から入社希望者が集まる 「秋山木工」

 徒弟制度を使って職人仕事人が持つ「学ぶ姿勢」を強烈にドライブさせ、優れた職人を育成している会社が神奈川県にある。注文家具を製造する秋山木工だ。同社は現代には珍しいほどの厳しい丁稚制度をとる会社として知られている。

 新人は入社後4年間、丁稚として寮生活をしながら、先輩の丁稚と一緒に修行を積む。寮生活での起床は午前5時前で、毎朝15分のランニングを社長と一緒に行い、近隣の掃除をする。

 寮と工場では食事の準備や工場の掃除、先輩職人の手伝いをしながら、工具の扱い方や材料の知識など、家具作りの基礎を学んでいく。携帯電話と恋愛は禁止。親との連絡は手紙でやり取りをする。

 給料は出るものの、ほとんどが寮費や光熱費を引くと3万円程度しか残らない。そのお金も道具代に消えていく。もちろんすべて買い揃えるわけにはいかないので、かんなやのみなどを1本ずつ揃えていく。仕事が終わっても自分の勉強や訓練があるので、平均睡眠時間は3〜4時間。

 丁稚時代では社長の秋山利輝さんの言うことは絶対で、言ったことは必ず実行しなければならない。

 さらに驚きなのは、丁稚時代は男女問わず頭を坊主に剃り上げることだ。毎年入社が決まると、男女を問わず先輩がバリカンで剃り上げる。これは30年以上続いているルールである。

 女性の大切な髪を剃られて、泣き出しそうになる子もいる。しかし秋山さんは「坊主にするのは覚悟を決めさせるため」と言い、これを続けている。もし坊主を拒否するなら入社しなければいいだけの話。

 本人が覚悟を決めても親が不安がるそうだが、秋山さんの説明や先輩職人や丁稚の言動に触れると納得して「お願いします」と頭を下げるそうだ。

 まるで修行僧のような厳しい丁稚生活だが、秋山木工は全国から毎年入社希望者が絶えないという。競争率は平均で10倍。それでも入社後あまりの厳しさに辞める人もいるようだが、丁稚期間もほとんどが残り、4年後に卒業を迎えるという。

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