COLUMN ビジネスシンカー

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2019.01

AI、VR … 先端テクノロジ全盛時代だからこそ 人を伸ばす丁稚奉公・徒弟制度が活きる!

優秀な職人が10人いたら会社は潰れる!

 こうした厳しい修行に耐えた丁稚たちは、4年後には木工の技能オリンピックで金メダルや銀メダルなどを取るまで確実に力をつけ、さらに国内の一流百貨店だけでなく、エルメスやグッチなど海外の有名ブランドからも取引の依頼が舞い込むようになっていくという。

 徒弟制度は、決して自分の職や顧客を奪おうとする若手の成長を阻止するものではなく、秋山さんが言うように、早く一人前の職人にするためのシステムなのだ。

 それほどの実力を持った職人たちだが、秋山木工では8年後には全員辞めさせている。独立してもらうためだ。

 育てた側からすればそれだけ手塩にかけて育て上げた人財が、しかもこれから脂の乗る30代前で独立させるのはなんとももったいない話に聞こえる。秋山さんによれば、それが会社にとっても本人にとってもベストな選択なのだそう。

 秋山さんは「腕のいい職人を10人雇ったら会社は潰れる」という。それは「同じ親方や同じ仲間に囲まれながらの職場では、刺激がなくなり、マンネリ化し成長が難しくなるから」だ。

 そうならないためにも毎年8年経った社員には辞めてもらって、新しい環境に飛び込んでもらうのだそう。秋山さん自身もそうしてきた。実力がついたと思ったら別の会社でまた新しい技術を身につけて成長した経験があるからだ。会社を変わることで給料が下がる場合もあったが、秋山さんは自分への投資だと思って続けたそうだ。

 だから8年経って外に職人を出す時も、出来る限りのことはする。職人の将来を考えてできるだけ成長できる環境を探し、受け入れ先の選定にも関わる。海外で修行をしたいという職人には、そういう職場も探す。また独立する時には高価な機械を買うための保証人となることもある。

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