COLUMN ビジネスシンカー

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2019.03

経営者必読! どん底から再生する経営 生死の淵で守るべきもの。捨てるべきもの

会社をたたむ決心を変えた女性社員の一言

 「会社がなくなったとしても、僕らの関係はなくなるわけではないから」

 どこか言い逃れにも取れる言葉を明るく語る沖中さん。しかし場はどん底だった。

 しかしその時、ある若い社員が明るくこう語った。

 「え〜、会社やめちゃうんですか?私、アルバイトしてお金を入れますから、もう少し会社やりましょうよ。だめかなぁ」

 この言葉は、ほかの社員の気持ちも代弁していた。その言葉先にある沖中さんの言葉をみな、待っていた。

 ただすぐには答えることはできなかった。

 しかし結果として沖中さんは会社を続けた。再生の鍵は「いやな予感」のした通販事業だった。負債を早く解消するため、沖中さんたちが取った戦略が「代引き」だ。クレジット決済が主流の通販で代引き中心のモデルは、タブーとまで言われていたが、宅配業者を通じて確実に現金が回収されるシステムは、沖中さんの会社を見事に復活させた。売上は12億円を超え、7人のスタッフは契約を含めると50人にまで増えた。

 沖中さんはまさに人材に救われたのだ。それは新人だった彼ら彼女たちを時に厳しく時に慈愛をもってしっかり育ててきたからだ。社員との距離が近い中小企業だからこそできた復活劇なのかもしれない。

 いかがだろうか。会社の倒産は遠いようで身近な世界だ。その時問われるのは、最終的には人間性なのかもしれない。

 復活劇というと、どこか不撓不屈の精神力がものを言いそうだが、ここに登場する人たちは、淡々と受け入れ(たように感じる)、そして周りの人の話を聞いて、しっかり軌道修正をし、そこから背骨となる経営哲学を掴んだ人たち。そんな気がする。

 その時の気持ちに寄り添うだけで、私たちも見えてくるものがあるはずだ。


POINT

■ 人を雇う余裕がない時は、お客さんを利用する

■ 借金返済をゲーム感覚として楽しめ

■ 辛いことばかりみてはいけない。楽しんでできることを考える

■ わかっていることだと思ってもしっかりマーケットリサーチをする

■ 経営を客観化するために、経営コンサルタントなど第三者の客観的意見を聞く

■プライドは捨てる。捨てたつもりでもまだこだわっている場合がある

■融資や資金調達は、メインバンクだけでなくさまざまなところから話を聞いてみる

■社員と社員の生活をイメージする。

■社員の力を信じる

■倒産から見返してやろうというようなことは思わないこと

■自分にできることを考える

■驕らない。中庸の精神を持つ

■事業は一人ではできないという認識を再確認する

■普段の人脈づくりが、倒産後の再生の鍵をにぎる

<参考>
『逆転劇』 市川徹[ アートン]
『倒産社長 復活列伝』 三浦紀夫[ 草思社]
『100 回失敗、50億失った、バカ社長』杉山春樹[ WAVE 出版]
ほか

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