COLUMN ビジネスシンカー

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2019.05

現有資産を捉え直して、儲けのポイントを探る! 令和の時代に押さえておきたい儲かるビジネスモデルの研究

真のお客様を医者から患者様へ再定義。市場拡大した「エーザイ」

 世の中には「お客様第一」「お客様のことを思って」「徹底した顧客志向」などを掲げる企業は多いが、問題はどこまで徹底できるか、である。

製薬会社のエーザイは、社長の内藤晴夫さんの就任以来、顧客を再定義し「患者さま志向」を打ち出した。 

従来製薬会社の売上は、そのクスリを使うかどうかの決定権を持つ病院の医師にかかっていた。そのため製薬会社ではMRと言われる営業担当者が、いかに医師が気に入るクスリを提供することができるかという点に注力してきた。このため真のお客様である患者の利便性と乖離したクスリが提供されることもしばしばだった。

 内藤さんはその志向の徹底を図るために、MRを病院に送って研修させ、クスリが患者にどのように服用されているのか、現場の声や実態のデータを取り続けた。

 その結果、患者にとってのクスリの良さは、効き目や副作用の少なさだけでなく、飲みやすさにもあると認識。それをもとに水を含むと速やかに崩壊する錠剤(湿製錠)という新たなクスリを生み出し、真の顧客である患者の評判を獲得、市場を広げた。

 「客はドクター(医師)」が常識の医薬品業界において、この転換の徹底と成功は、大きな衝撃を与えたのだった。

 このように「顧客が誰であるか」という問いは、ビジネスが行き詰まりを見せたときに極めて有効な問いであり、ビジネスモデル変革のトリガーになる。

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