COLUMN ビジネスシンカー

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2019.05

現有資産を捉え直して、儲けのポイントを探る! 令和の時代に押さえておきたい儲かるビジネスモデルの研究

クラウドとITが重機メーカーの収益構造を変える

 クラウドコンピューティングは、従来型のものづくり企業のビジネスモデルも変えた。

 たとえば重機メーカー。従来建設会社などへ油圧ショベルやブルドーザーなどを売って、交換部品やメンテナンスなどの一部を無償サービスとして提供していたが、近年は重機を売った後のアフターマーケットに力を入れている。部品交換やメンテナンスサービスを充実させ、これを有償化。本体の利益より重視するようになった。

 重機メーカーの「コマツ」は「コムトラックス」というGPSとインターネット回線を使った独自のITシステムにより、世界中で稼働している自社機械のさまざまな情報が取れるようにしている。機械のさまざまな場所に取り付けられたセンサーから情報が掬い上げられ、機械がいまどこにあり、動いているのかいないのかだけでなく、どのような動き方をしているのか、燃費がどのくらいなのか、油圧はどのくらいか、ラジエターの温度はどのくらいか、何かトラブルが起きていないか、無駄な動きをしていないか─などが遠隔地から管理できる。

 コマツはこのコムトラックスを、販売する重機に無償で取り付けた。1台につき10万円以上はするというシステムを、すべての製品に取り付けることは大きな決断だったが、これによって大きなビジネスチャンスが生まれることになったのだ。

 その最大のメリットが「予防保守」だ。そもそも過酷な建設現場で使われる建設機械は壊れることが前提となっている。そうしないとコスト的に見合わないからだ。そのため、故障が起きたときにいかに現場を止めずに素早く修理できるかが求められてきた。大きな建設会社ではスペアの部品などを用意しておくことができるが、小さな建設会社にとっては負担となる。

 コマツの重機では、このコムトラックスのネットワークにより、重機を所有している建設会社より、コマツ側のほうが早く重機のトラブルがわかるようになり、素早い対応が可能となった。それだけでなく油圧やラジエター、エンジンなどの状況が常にモニタリングできるようになっているので、「そろそろエンジンオイルの交換時期だな」「ショベルのツメの交換時期だな」など、故障前に消耗品や部品の交換が可能となり、機械が故障で止まることを予防できるようになったのだ。

 ユーザーである建設会社にとっては、機械トラブルで作業が遅れるリスクが減り、機械を提供するコマツにとっては、オイルなどの消耗品や部品を定期的に注文してもらえるので、売上が立ちやすくなる。

 また安いオイルなど消耗品や部品市場を、別の業者に奪われにくくなるというメリットも生まれる。もちろんユーザーにとっては、正規品というやや高額な商材を購入し続けることになるが、粗悪品を使うことでの故障リスクも減り、かつ定期的なメンテナンス負担も減るため、結果としていわゆるWN-WINの関係が構築されるのだ。

 こうしたメンテナンスを中心とした手厚いサービスは、機械が大型化するほど必要になり、とくに海外の大型鉱山などでの需要が増している。

 鉱山向けの1台何百トンもある超大型機械においては、交換パーツや消耗品、ときに専門エンジニアを現場に貼り付けるサービスなどで、機械の導入価格の数倍の売上げが上がるようになっている。

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