COLUMN ビジネスシンカー

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2019.06

グローバル時代を生き抜く 異民族に学ぶ海外ビジネスネットワーク

3大移民のユダヤ人が大切にすること

 もう1つの代表的移民、ユダヤ人はどうだろうか。

 同じ民族集団のネットワークを作り、世界で生きてきたユダヤ人は、華僑や印僑と同列には語れない部分がある。

 なにせその移民の歴史が長い。ユダヤ人は紀元前70年もの昔に国家を失ってから、世界中で迫害を受けながらも、再び自国を建設するという夢を、それこそ何十世紀にもわたって世代を超えて持ち続け、実現した歴史があるのだ。

 固有の国土というものを持たない時代が長かったため、どのような環境でも生きていけるように商売のセンスを磨くことを、同胞に求めたのである。現地化を図りながらも、民族集団としての意識と誇りを忘れないように努め続けた。

 こうした意識はユダヤ人を金融業界、金融家に向かわせた理由の1つとなっている。ユダヤ人が代々大事にしている教えをまとめた「タルムードの教え」には、次のような文言がある。

 貧しさを憎み、金に不自由しないよう努めるよう戒めているのがわかる。しかし、決して金の亡者になることを勧めてはいない。

 他のユダヤ人の格言では、

 などとあり、お金は重要だが、何よりお金を生み出す能力を持つことが大事であると教えている。すなわちユダヤ人にとって最大の投資は、教育であるということなのだ。

 それは学校や教育機関で学ぶだけではなく、本を読み、知恵者や知識人と交わることで、自分の知識、知恵がついていくことを意味している。つまり自己投資が大事だと伝えているわけである。

 ユダヤ人は土地が奪われて、国家がなくなっても民族の自覚と誇りがある限り、つまりどのような形でもユダヤ人という民族が残っている限り、ユダヤ人国家ができると信じていた。そのためにはまず自分たちが生き残り続けること。子孫を営々とつないでいくことが何より重要だったのだ。

 

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