COLUMN ビジネスシンカー

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2019.06

グローバル時代を生き抜く 異民族に学ぶ海外ビジネスネットワーク

[newcomer&考察】空前のハイボールブームで盛り上がり 変わる洋酒模様

 

 

 洋酒業界に異変が起きている。ここ最近、高級国産ウイスキーの販売休止が相次いでいるのだ。昨年はサントリーの「白州12年」「響17年」の出荷が止まった。そして今年に入って、キリンの「富士山麓 樽熟原酒50°」やサントリーの「白角」「知多350ml」などが販売中止となっている。
 理由は急激な需要増だ。

 落ち込み続けていたウイスキーの国内市場は、2010年頃から徐々に回復し、2017年には、ここ数十年で最低だった2008年の2倍以上まで持ち直している。

 需要増の要因は国内だけではない。最近は海外で"ジャパニーズ・ウイスキー"の評価が高まり、輸出が急増していることもある。ウイスキーは仕込んでから数年から数十年寝かせるため、出回る量はその数年前、数十年前の仕込み量で決まってしまう。急激な需要増には対応できないのが悩ましい。

 

 国内の有名ウイスキーが払底している最大の要因は、サントリーが若者向けに仕掛けた角瓶のハイボールプロモーション。これが爆発的にヒットした。その余波はサントリーのみならず、キリンやニッカを要するアサヒビールにも及んだという次第だ。

 メーカーは、限りある原酒をどの商品に割り当て、どの商品を販売休止させるかという、苦渋の決断を迫られた。

 そんな、大手の"非常事態"の機に乗じ、二つの波が割って入ろうとしている。その1つが、地方の小規模な蒸留所でつくられる少量生産のウイスキー「地ウイスキー(クラフトウイスキー)」だ。

 たとえば、話題を呼んだ「イチローズモルト」で知られる埼玉の株式会社ベンチャーズウイスキーの秩父蒸留所や、シングルモルトの「三郎丸」やブレンデットウイスキーの「ムーングロウ」をつくる富山の若鶴酒造が手がける三郎丸蒸留所、2016年に誕生した福島の笹の川酒造が手がける安積蒸留所、信州の本坊酒造が手がけるマルスウイスキー、長浜浪漫ビールの長浜蒸留所など、国内の古参、新興勢力も続々と台頭し、サントリーとニッカの2社だけで9割近いシェアを占めている国内のウイスキー市場の中で、存在感を示している。

 

 もう1つのウエーブは、"ウイスキーの産地=冷涼な地域"という常識を覆す、暑い国からの攻勢だ。

 そのホットスポットになっているのが、台湾。同国のシングルモルト「カバラン」は、スコットランドの3~4倍の早さで熟成するという"早熟"技術を用いて、世界的コンペティションで最優秀シングルモルトを2年連続で受賞するほどの実力まで上り詰めている。

 知る人ぞ知るウイスキー大国と言われるのがインド。そのインドから国分グループが輸入しているのが、シングルモルト「ポール・ジョン」だ。こちらも、国産ウイスキー不足を補って余りあるほどの実力派として知られ、世界24カ国で発売されている。また新興のウイスキーボトラーでもある静岡のガイアフローが輸入しているのが「アルムット」。シングルモルトからバーボンテイスト、ラムテイストなど日本や本場スコットランドでも出会えないような実にバラエティ豊富なラインナップを揃えている。

 

 一方払底したウイスキーに変わって、大手メーカーでは、バーボンなどの拡販に躍起となっている。サントリーは2013年に買収した「ジムビーム」(子会社のビームサントリー社販売)でハイボールを提案、モデルのローラを用いたCMで「角ハイボール」の二の矢を放った。

 

 これとスイッチするようにニッカを持つアサヒビールは、バーボンの老舗ブランド「アーリータイムズ」と「ジャックダニエル」の販売権を得た。ちょうどサントリーと販売権交換するような形となったのだが、アサヒビールもバーボンの定着を図るべく、若者向けのプロモーションを手がけている。

 

 現在、国内大手メーカーでは原酒不足改善に向け、貯蔵庫の増設や蒸留所の生産能力増強などへ巨額を投じて対策を急いでいるが、原酒が樽の中で眠っている数年の間に、果たして市場が大きく変化しないか、気になるところだ。

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