COLUMN ビジネスシンカー

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2019.07

2500年前からの知恵 「孫子の兵法」に学ぶ

最善の戦いは、戦わないこと。

 その戒めや箴言は2500年経っても決して色あせず、IT、AI華やかなりし現代の経営戦略においても十分通用する。例えば最も有名な一文、「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」は、戦いにおける情報の重要性を説いたものとして知られている。まるで現代の情報化社会を予言してたかのようだ。

 しかし孫子はそう言いながらも百戦戦えとは言っていない。

 「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」

 100回戦って100回勝つのであれば、そのたびに戦利品に与れるから、喜んで戦いに挑みそうだ。しかしそれは善ではないと、孫子は説く。最善なのは、「戦わずして勝つ」ことだと。孫子は戦うことがいかに、人々の物心を傷つけるかを知っていた。戦争がいかに国を疲弊させるかを知っていたのだ。

 戦争はたくさんの人とモノ、金をつぎ込む必要がある。孫子は戦争をするには、軍隊を編成する必要があるので、最低でも戦車1000両、補給車1000台、兵士10万人を用意しなければならない。またそれが遠征の場合は、食料を輸送するための国費や軍費、外国との交渉のため、資材調達のためのお金が必要となると指摘していた。

 いざ戦争が始まり、それが長引けば、たくさんのモノや金、そして人の命が失われる。日に日に兵士の力は弱まっていく上、気力も弱まっていく。それでも激戦を広げるとなると、国の財政が苦しくなるということを知っていた。

 だから、「用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るはこれ次ぐ」と言っていた。つまり最善の戦略は戦わないことで、戦って勝つのは決して得策ではないと述べているのだ。

 

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