COLUMN ビジネスシンカー

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2019.09

ビジネスコミュニケーション力の基本は「ホメ力」にあり  ホメ力アップが仕事力、人間力をアップする

【newcomer&考察】脳が気持ちがいい音「ASMR」で売り上げアップの時代に

ASMR。ご存知だろうか。最近は日韓の国交問題のねじれからいきなり破棄となったGSOMIAの読み方が話題になったが、ASMRも読み方はちょっと迷う。「アスマー」、もしくは「アズマー」などと呼ばれているが、ローマ字読みで「エー・エス・エム・アール」が正しい読み方のよう。ASMRとは、「Autonomous Sensory Meridian Response=オートノマス・センサリー・メリディアン・レスポンス」の略で、日本語では「自律感覚絶頂反応」と訳されている。と言われても何のことかはわからない。

ASMRとは、最近「YouTube」などの動画投稿サイトでヒートアップしているマニアックな音を聞くことで、脳が刺激され、じんわりととろけそうになるくらいの快感を覚える現象のことを指す。いまこのASMR動画が世界的なブームとなっている。

ASMR動画は10年ほど前に米国で誕生して、この数年は日本でも"音フェチ動画"と呼ばれ、2017年あたりから急速に認知度がアップしている。

その内容はどんなものかというと、人気を集めているのが食べ物を食べている咀嚼音。ほかにガスバーナーの燃焼音、炭酸水の泡が弾ける音、雨粒が傘に当たる音、焚き火のパチパチ弾ける音、古本の表紙を指でタッピングしたり、マッチをこする音、点いた火を水で消す音......聞きようでは、ただのノイズでしかないが、このありふれた日常の生活音が、人間には"快感"をもたらすのだ。これらの音は、単に録音されて動画配信されているのではなく、より立体的に聞こえるようにと、特殊な"バイノーラル(立体音響)マイク"を使って収録されているのが一般的。

人気動画の中には再生回数が1000万回以上、3000万回に達するものもある。

このASMRは、もちろん企業も取り入れはじめている。

「ケンタッキー(KFC)」は、今年4月に発売した「パリパリ旨塩チキン」のPR動画にASMRを活用している。

その名の通り、"パリパリッ"という食感が訴求力を発揮して想定の1.5倍の売れ行きを実現したという。

「森永製菓」も4月、チョコアイス「パキシェル」のブランドプロモーションに活用。テレビCMを一切せず、"パキッポキッ"という食感をネットで"音"を訴求した結果、2018年度の販売量が5年前の2.6倍に拡大したという。

またセルフメイド家具の「IKEA」では、商品の質感より、その心地よさを伝える手法としてASMR動画を採用。ベッドのシーツを静かに撫で触ったり、机や卓上スタンドをコツコツと叩く音などが25分間流れる動画を流したところ、同社の他の商品紹介動画と比べ、100倍以上の再生回数を獲得している。

このほか、「シャネル」もその仕立てのシーンの動画をナレーションなしで、ミシンやカッティングの仕立ての音だけで構成し、訴求。

ライターで知られる「Zippo」は、これぞASMR動画という動画を制作。片手で何度も火を点けたり、表面を触ったり、タッピングしたりなど、マニアの所有欲をくすぐる内容となっている。

「アップル」もASMR動画をいち早く取り入れた企業だ。同社は30分程度のASMR動画を複数上げている。

一方でこうしたASMR動画だけに特化した芸人やYoutuberも増えつつある。

商品の魅力を全く新たな角度から伝えることができるのが、ASMR動画を使った広告のメリット。実際、ASMR動画を見てから、それを食べるかどうかを決めるという人が増えている。事前にASMR動画で、その商品の咀嚼音を聞いて"食欲の予習"をしておくと、普通に食べる2~3倍はおいしく感じるという体験談もある。

言葉より、食欲や購買欲をダイレクトに刺激する新しいマーケティングの可能性を秘めたASMR。インスタ映えならぬ、"音映え"がトレンドとなる時代がやってきたようだ。

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