COLUMN ビジネスシンカー

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2020.04

先の見えない時代、ビッグデータ時代だからこそ学びたい 勝負師たちの「勘」

わずか30分の騎乗で馬の調子をすべて感じ取るトップジョッキー

しかし勘は鍛えることができる。鍛えることで、勘がしっかり身につき、働くようになる。

たとえば競馬の騎手(ジョッキー)。

競馬は普通のスポーツとは違い、騎手がいかに優れていても強い馬とのめぐり合わせがなければ、勝つことができない。またいかに速い馬でもレースの展開に恵まれなければ、勝てない。まさに人馬一体となって、さらに運に恵まれなければ勝てないのだ。そのなかで歴代2位、通算2943 勝、重賞と言われる高額賞金の掛かるレースで171 勝をあげた日本中央競馬会のトップ騎手、岡部幸雄さんもまぎれもなく勝負勘を持っていた人だ。

騎手という職業は、馬の背に乗った時にいかに馬の状態を掴むかで勝負が決まる。とくにフリーのジョッキーは、レースごとに騎乗を依頼されるために、レース直前のパドックで30 分ほどの間、その背に跨って調子をつかむ。

もちろん、それまでにその馬の過去の成績や癖、体質などの情報、また出走する馬の成績と特性、鞍上する騎手の成績や個性などさまざまなデータを叩き込んでいる。事前の情報収集がいかに大切かは、ほかのスポーツや仕事でも同じだ。

その上でレース展開を読み、どの馬より先にゴールを通過することを考える。「たとえ出走メンバーのなかで実力が劣っていたとして、なんとか勝たせようと考えるのが騎手の仕事だ。そのためには、ただ理にかなった細心の騎乗を心がけるだけでなく、実力差を覆すための秘策なども必要になってくる。だからこそ騎手は、レース前からシミュレーションを練っているのだ」(『勝負勘』〈以下同書〉)

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