先の見えない時代、ビッグデータ時代だからこそ学びたい 勝負師たちの「勘」
同じ騎手、同じ馬で10回のレースを行ってもレースの展開は全部変わる
馬は重要なレースだからといって、一所懸命走るとは限らない。常にトップギアで激走するのでは、馬も大変だ。
「レースにおいて、馬たちは常に全力で走っているわけではないので、どこで馬を本気にさせるかという『仕掛けのタイミング』も、騎手の判断に委ねられる重要なポイントの1つになる。その仕掛けのタイミング1つをとっても、常識的なタイミングを選んでいくだけではなく、一発勝負にかけるような大胆さが求められるケースなども出てくる」のだと。
しかしその綿密なシミュレーションも、直前のパドックで跨った状態で「!」というものなのか、「?」というものでは、レース展開は変わってくる。トップジョッキーは、極論から言えば、わずか30 分、自分のお尻から感じ取る馬の状態でレースを調整、組み立て直すのだ。それだけではなく、周りの馬の状態もみる必要がある。
ライバルと目していた馬の状態が悪そうに見えたり、事前に軽視していた馬の状態が良さそうに見えれば、そこでまた考え直す部分が出てくるからだ。
そのレースも当然シミュレーション通りとはいかない。
「1つのレースに出走した同じ18頭に同じ騎手が乗り、同じコンディションで10 回レースをしたとしても、レースは10 回とも性質が異なるものになるからだ」
つまり馬やジョッキーの情報を集め、さらにレース展開シミュレーションを重ねて望んでも、その通りならないのが競馬。だからこと瞬時瞬時の判断、「勝負勘」が必要となってくるというわけだ。
たとえばコーナーでのコース取りを選択する際には、コーナーの内側に入るか外に出るかという目の前の選択だけでなく、先を読む姿勢も必要だという。
「コーナーでの選択をする際には、前の馬たちがどれだけのスタミナを残していて、その後にどういうコース取りをするかをしていくまでを推察しておかなければならない」
そして「選択肢が差し出された瞬間に『これだ!』『できる!』と確信に近い答えがはじき出されてこそ、いい結果につながる。それはやはり直感が導き出している回答だとしか言いようがない」