COLUMN ビジネスシンカー

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2020.06

ポストコロナ時代の羅針盤
知って目からウロコ!
開疎化の時代の産業集積入門

国や学者が関心を寄せる
産業集積地

新型コロナは私たちの暮らしを確実に変えそうだ。

テレワークの普及で、大都会の密集を避け、本社や拠点を地方に移すケースも増えてくるのは間違いない。

その意味ではあらたな地方創生の幕が上がったといえるかもしれない。地方創生というとこれまではインバウンドがらみの観光業や工場誘致が主体だったが、永続的な「創生」のためには地元の資源を見直すことも重要だ。

その一つの鍵を握るのが特産品であり、その生産システムである。特産品が集まった地域を一般に「産業集積地」と呼ぶ。

地域経済に詳しい法政大学大学院の岡本義行教授は、産業集積地を「産地」を含んで、その定義を「限定された地域に同業種の企業が多数立地している状態」としている。諸説あるが、日本にはおよそ500あまりの産地があるとされる。

たしかに日本には「ここしかない!」という特産品がたくさんある。野菜や果物など青果物などのほか、伝統工芸品などの加工品もかなりの数にのぼる。1つのカテゴリの製造物や商品が長年高いシェアを保っている地域や企業群が、全国のいたるところに存在している。

たとえば福井県鯖江市のメガネフレーム、北海道旭川市の家具、新潟県の燕市・三条市一帯の金属洋食器、福岡県福岡市の明太子、埼玉県岩槻市一帯の人形、福岡県久留米市のゴム産業、静岡県富士市の紙・パルプ産業、岡山県倉敷市のデニム、広島県福山市のユニフォーム、愛媛県今治市のタオル、香川県のうどん、埼玉県加須市のこいのぼり、山梨県の印章、長崎県佐世保市のハンバーガー、山形県天童市の将棋駒、長野県長野市、大町市の国産ギター、秋田県横手市の納豆などなど。

産業集積地の多くは、古くより地域の人々の生活様式、人材や技術、交通網などを含めた地域資源を活用しながら、地域経済や国の経済の発展に寄与してきた。

実は近年、産業集積が果たす役割についての研究が進み、学者や政治家、行政の政策担当者、金融関係者、企業人など多方面の人たちが注目している。国も高い関心を寄せているようで、集積促進や集積地の活性化などを目的とした政策も打ち出している。

1999年に施行された「新事業創出促進法」などがそうで、これには"経済地域産業資源を活用した事業環境の整備"が盛り込まれている。

国全体の経済力を底上げするには、関連する企業を集め、シナジーを高めながら新しい技術や商品を生み出すことを奨励しているのだ。

とくに近年は産業集積地の商品は国内のみならず、世界各地との競争にさらされている。企業間の競争力や国内の地場産業だけの技術開発力だけで生き残ることは難しくなってきている。

たとえば、日本の時計は一時、クォーツなどの高い技術力を背景に、スイスやドイツなどの時計を凌駕し、高いシェアを誇っていたが、スイスなどが国を挙げての機械式高級時計で巻き返しをはかり、その座からひきずり下ろされた。

これに対してお隣韓国や中国では、挙国体制でスマホをはじめIT機器・電子デバイス、鉄鋼や造船などの企業を育成、官民一体で世界に売り込んでいる。

いずれにしても関連する産業を集積させることで、経済にインパクトを与え、国や地域を発展させることは、古くから行われているのだ。

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