COLUMN ビジネスシンカー

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2020.08

ビズシンカーインタビュー
始まった「価値の逆転」
これからは地方が生む価値が
東京で生む価値を抜く

葉っぱで
”イケてる”靴をつくる!

阪口● もちろん。僕は全国にいろいろなことを教えてくれるおじいさんがいるんですね。最近面白いなと思って準備しているのは、鹿児島の与論島で天然白髪染めの原料となるヘナを育てて、白髪染めとして売り出すことです。与論島では海水を使った化粧水の原料を提供してもらってるんですが、与論はサトウキビ農家が多く、サトウキビを刈って工場まで運んで砂糖にしている。でもサトウキビは重くて運ぶのが重労働。与論島は過疎でお年寄りしかいないから「あと10年もしたらサトウキビ農家はなくなる」と地元のおじいさんたちが言っていたんです。

でもヘナの話をしたら、「ヘナだったら収穫できそうだ、与論をヘナの一大産地にしないか、阪口さん一緒にやろう」と言ってきた。それでいま300 坪くらいの畑で栽培して、どれくらい収穫できてそこからどれくらい原料ができて、いくらで売り出せるかを計算しています。うまくいけそうだったら、来年からキロいくらで買う予定です。単価さえ合えば、僕が栽培しなくても地元のおじいちゃんたちが面倒をみてくれて、耕作放棄地もなくなっていく。

それから、いま靴をつくろうと思っています。

BIZ ● 靴ですか?

阪口● 前から考えていたんですが、いま試作していて、コロナでステイホームとなったので、バブーシュに切り替えようと考えているんですが。9月にリリースする予定です。スペインのメーカーの素材で、販売するんですが、これをいま日本でつくれないかということで大学と組んで素材研究を始めたところです。開発できたら、これはほかに環境に配慮した壁紙とかにも使えるし、アパレルメーカーにも提供できると考えています。いろいろ可能性があります。

BIZ ● どんどん広がりますね。そういうアイデアは阪口さんのセンスだと思いますし、たとえそう思っていても、なかなか現実につくれるものではないと思います。それは先程おっしゃっていた人とのつながりがあるからだと思います。この人と組もうとか、この人とならやっていけるという、基準みたいなものは、何かあるんですか?

阪口● 勘もかなり重要視しています。タイニーハウスをやろうと思ったのも、たまたまその耕作放棄地を見ていたら地元の人がふらっとやってきて、名刺交換して「こんなことやりたいんだ」って言ったら、その人は「すでに俺はここでそんなことをやってるんだ」みたいな話をしてきて......どこの誰かは知らないんですよ。でも僕は「やるんならこの人だ」と思ったんですよ、そこで。

僕はコロナの前から、結構SDGs関連の講演で自治体から呼ばれていて、行くといろいろな人に会う。そこで「うちにこんなのがあるんだけど使われないか」とか相談される。やるんなら、やっぱりちゃんと売れて利益を出せるようにしたいし、続けていけるようにしたいんですよ。そういう感覚から選んでいますが、やるやらないは勘もありますね。

BIZ ● そういう原動力ってなんなんですか?

阪口● いまのSDGsを意識したビジネスをやる前のビジネスって、あまりやる気がなかったんですよ。絶対一生やる仕事ではないなと思っていて。人生は一回きりだし、やるなら好きな仕事をしていきたいと。

普通、生活は仕事と別に考えますよね。仕事をして空いた時間が生活のような。でも僕は違うと思っていて、仕事も全部生活の一部と考えてるんです。空いた時間のために稼ぐ生き方をしているわけではないんです。だからいま楽しいですよ。生活を楽しんでいる、それが原動力かもしれませんね。

BIZ ● 阪口さんの話を聞いてると少しずつ未来が良くなっていく気がしています。本に書かれていたようにこれまでは自然を破壊して経済が発展してきた。でもこれからは経済を回していくことで、自然や環境をよりよくしていく時代に入ったんだと感じます。

でも1つ懸念しているのは、技術の進化スピードです。テクノロジーによってEVや太陽光発電など環境負荷の少ない技術や製品が出てきて、AI やITの技術が世の中を便利にしています。でも今後さらにハイテクノロジーが進んだ時に、オーガニックでサステイナブル(持続可能)な暮らしはどのように融合していくのでしょうか。よくサステイナブルで環境負荷の少ない暮らしというと、昔の暮らしに戻るのかという言い方をする人もいますが。

阪口● 僕はサステイナブルな暮らしには必ずテクノロジーは必要だと思っています。最新のAI もロボットも必要だと思います。要は使う人の考え方だと思うんです。それは兵器にもなるし、SDGs としての平和利用もできる。

例えば、オーガニックがいいからとサトウキビを増やそうとして、森林を焼き払ってプランテーションして、そこで働く人たちを低賃金でガンガン使ったら、結局社会は悪いほうに向かう。最終的にそこを変えていかないといけないというのが僕の結論なんです。でもいま70億人のために地球の課題をみんなで解決していくことで、より豊かでサステイナブルな未来がつくりやすいとしたら、それは利用すべきだと思うんです。それは大企業とか中小とか、どんな業種も関係なく、誰もが共感を得やすくなっているし、とても取り組みやすくなっている。やったほうが絶対メリットがあります。この記事がその取組のきっかけになったら、すごく嬉しいですね。

※ 1)SDG s = Sustainable Development Goals( 持続可能な開発目標):2001 年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015 年9 月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」にて記載された2030 年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。17 のゴールと169 のターゲット、232 の指標から構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no onebehind)」ことを誓っている。 SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本も積極的に取り組んでいる。SDGs に取り組むことは企業にとっては「儲かる」ことは確かで、2017 年のダボス会議の経済フォーラムではSDGsに取り組むことで世界で12兆ドル、3億8,000万人の雇用が見込めると発表された。

※2)エコシステム(ecosystem):もともとは生物用語の生態系を意味する。生物界においては、弱肉強食の捕食関係があるが、一方で相互補完的な共存関係を作り上げている。たとえば、自動車会社は、自社以外にもたくさんの関係する取引先をもち、その取引先企業はさらに取引先企業をもっている。いわゆるサプライチェーンと呼ばれる企業群だが、それ以外にもそのサプライチェーンを支える間接的な組織が関わることでその自動車メーカーと自動車産業が成立する。陸路の輸送においては、自動車と電車、航空機は競合関係にあるが、それぞれがすべてのニーズを代替できるわけではなく、また補完する関係にもある。こうした見えない補完、共生関係、そして多様なサブシステムなどが実際の経済を回している。このため、ニッチ(生物学的には棲家)と言われる分野は経済が複雑化すればするほど生まれ、小さい企業でも生きていく可能性が高くなる。

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