COLUMN ビジネスシンカー

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2020.11

外国人が来ない今だからこそ鍛える
日本のビジネスマンの教養!
押さえておきたい
日本庭園のキホン

登竜門の故事から誕生した
蘭渓道隆の「龍門瀑」

このほか水を使った装置としては、滝が重要な役割を果たしている。滝は飛鳥時代には作られていた。滝は庭園のなかでも主役級の存在で、その形式もさまざまなものがある。

平安時代に誕生した「作庭記」では滝の水の落とし方に言及していて、主に次のような種類が挙げられている。

●「稜落ち(そばおち)」...滝が正面から見て斜めを向いているよう、滝の面を少し左か右に斜めに向けて落とす方式

●「向かい落ち(むかいおち)」...二筋の水が向かい合うように落ちる方式

●「片手落ち(かたておち)」...滝壺に石を置き、そこに当たると水の向きがかわるように落とした方式。二段滝のような構図になる

●「糸落ち(いとおち)」...滝口の部分に凹凸のある水落石を置き、水の方向を複数に分散することでいくつもの糸のような滝をつくる方式

●「重ね落ち(かさねおち)」...二重三重に水落石を重ねて水路をつくり、滝の落差に応じて、水の筋がいくつも交錯しながら落ちる方式

●「伝い落ち(つたいおち)」...水落石のひだに従って水が伝い落ちる方式

●「布落ち(ぬのおち)」...淀ませておいた水落石にゆるく流しかけ、布をかけたような落とし方にする方式

●「離れ落ち(はなれおち)」...滝口に鋭角の水落石を立てて、急流として落とす方式。水が石を伝わらず、一気に落ちる

滝は、室町時代に枯山水の庭が流行り出し、水が使われなくなっても主役の座を守っている。この枯山水の滝の様式をリードしたのが、中国南宋から渡来した禅僧の蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)だ。

蘭渓道隆は、「登竜門」という故事からイメージした「龍門瀑」を生み出す。

中国の黄河上流には三段構えの激流の滝があり、この三段の滝を登りきった魚は龍になるとの伝説があった。これが「登竜門」のいわれだ。

蘭渓道隆は、石組のなかに、龍となる勢いのある鯉をイメージした石を組むようにした。この石を「鯉魚石(りぎょせき)」という。この龍門瀑は、後世の夢窓疎石(むそうそせき)などの僧によって広められていった。

龍門瀑は、池泉に流すための滝として作られていたが、滝が枯れてもその偉容に打たれる者が増え、次第に枯山水のなかでも多用されるようになったのだ。

龍門瀑がある庭園では必ずこの鯉魚石があるので、ぜひ探してみるといい。その勢いからエネルギーをもらうことができるかもしれない。

庭園における水のこだわりは、ほかにも池泉の汀(水際)にも見られる。池泉はもともと大きな海をイメージして作られているので、その汀には砂浜をイメージした施しがなされていた。その手法の1つが「州浜(すはま)」だ。州浜は池の汀に同じ形の石を敷き詰めて、水と岸との境目を曖昧にする効果を狙ってつくられたものだ。州浜の存在は汀の水が清らかに見える効果もあった。

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